素直じゃない ページ26
再び訪れたのは、今までと何の代わり映えもしないありきたりな日常。
うん。本当に何も変わっていない。
(…いや、別に何か期待している訳じゃないけども。)
鼻歌を歌いながら薬を混ぜる伊作先輩を一瞥して、そんなことを思う。
あの一件が過ぎてからというもの、怪我のせいもあって今まで以上に頻繁に医務室を訪れる様になった私は、実質保健委員のような立場に落ち着いていた。
別に委員になると言ったわけでも、なれと言われたわけでもないけれど、こうして昼休みの決まった時間に訪れては包帯や薬草の準備を手伝うのだ。
ちゃっかり薬草摘みの担当表に名前を書かれている辺りからして、自他共に認めるサブ保健委員で間違いなさそう。
伊作「そういえば、何かあった？」
「何ですか、何かって。」
当たり前のようにそう返すと、「えー、言わせるの？」と呆れた表情で返される。
はて、何のことか。
暫く考えてみると、何となく……いや、確実に先輩が言わんとしていることが分かった。
伊作「進展だよ、進展。」
「無いです。」
伊作「え……何も？」
「何も無いですけど……」
伊作「………本当に君達はねぇ……」
もう一度呆れた表情を浮かべてそう言う。
何です、そんなに大きな溜め息ついて。
先輩は、二段目の棚の一番奥から薬を取り出すと私に差し出した。
伊作「これ、頼んだよ。」
「…はい？」
伊作「君の旦那に。」
「違いますって。」
「なんで私が……」と口では文句を言ってみるものの、着実にそこへ向かう準備を始める私を見て、彼は笑った。
伊作「まったく、素直じゃないんだから。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 189人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かにかま(プロフ) - 音かなでさん» わーーー、ありがとうございます！書き手としてはこの上ないお褒めの言葉を頂けて光栄です。まだまだ終わりそうにない二人のお話ですが、気長に付き合ってやってくださいませ。 (2020年7月5日 18時) (
レス) id: c18fa87c81 (このIDを非表示/違反報告)
音かなで(プロフ) - ありがとうございます！凄い良かったです！かにかまさんの書き方というか言葉の選び方が温かくて読んでいてニヤケが止まりません！！これからも応援してます (2020年7月5日 17時) (レス) id: 73c7ce9b4a (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - j061191さん» コメントありがとうございます。そうですね、くっついてくれれば良いんですけど………。やっぱり人気なのは五年生サイドなんですね。参考にさせていただきます！ (2020年7月4日 22時) (レス) id: c18fa87c81 (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - 音かなでさん» リクエストありがとうございます。なるほど、勘右衛門ですね！新鮮なので上手く書けるか不安ですが、私なりに頑張ってみようかと思います…！お気遣いありがとうございます。 (2020年7月4日 22時) (レス) id: c18fa87c81 (このIDを非表示/違反報告)
j061191(プロフ) - かにかまさん» 二人とも気持ちに気づいたので早くくっついて欲しいです！番外編だと、やっぱり兵助の一番側にいる勘ちゃん目線が読みたいですね〜。鈍そうな竹谷くんにも登場して欲しい(笑)続きも楽しみにしています！！ (2020年7月4日 21時) (レス) id: ad5fefd1f8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かにかま | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/0660ea0a062/
作成日時：2020年6月15日 21時
