#40 ページ41
家に帰ると、珍しく上機嫌なクラピカ。
尋ねるよりも早く、テーブルに並んだ豪華な料理達がそれの訳を教えてくれた。
「どうしたの、これ？」
クラピカ「お前の部屋にあった本を見ながら作ってみた。中々上手くいったとは思わないか。」
「うん！凄く美味しそう。」
クラピカ「誰かさんに料理が下手だと言われてしまったから、いつか見返してやろうと思っていたんだ。」
「ふふふ、相変わらず負けず嫌いだね。」
クラピカ「さぁ、温かいうちに食べよう。」
「うん！」
一年ほど前までは当たり前だったはずの二人の晩餐。たわいのない話と口に広がる幸せ。
……だと言うのに、そんな贅沢に浸る余裕も無く、会話も右から左へと流れていく。
それも全部、あれの為だ。
クラピカには察されまいと思っていたのだけど、どこか態度に出てしまっていたのか、彼は怪訝な表情を浮かべ尋ねた。
クラピカ「何かあったのか？」
「別に…」
クラピカ「嘘つけ。目が泳いでるぞ。」
「き、気のせいだよ。」
クラピカ「何年一緒に居ると思ってるんだ。」
「…。」
ごめんね、クラピカ。
折角の御飯を無駄にするようなことをして…。
黙り込んだ私を一瞥すると、彼はため息をついた。
クラピカ「私には話せないことなのか？」
「…ううん、ただ心配かけたくなくて。」
今朝の仕立て屋であったこと。
カンタさんから聞いた話。
全部を洗いざらい話した。
意外なことに、彼はあまり驚いていないようだった。
それどころか寧ろ＿＿
クラピカ「良かったじゃないか。漸く家族が出来るんだな。」
喜んでいるように見えた。
反して私は、祝詞も拍手も嬉しくない。
「＿＿＿クラピカはそれでいいの？」
考えるよりも早く、口をついて出たのはそんな言葉だった。
クラピカ「…は？」
「…っ、ごめん！私、ちょっと頭冷やしてくるね。」
クラピカ「おいA…！」
目を丸くしていた彼の表情を頭の隅に置いたまま、私は家を出た。
「…。」
何でだろう、今日の私は変だ。
外の風にでも当たれば落ち着くかと思ったけど、余計に苛立ちが募っているような気がする。
カンタさんのことは好きだ。
女将さんのことだって。
だから、私を拾ってくれた二人の役に立てるのなら悪い話だとは思えない。
それに、その選択をしてもクラピカの傍に居ること、支えることは出来る。
…でも、何故だか悲しくなったんだ。クラピカに応援していると言われた時に。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 148人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
金糖の少女 - 恋愛感情で動きを変えないという解釈…！！わかります！！自分も同じ解釈なんですけど恋愛小説ともなると難しいのでどうしても解釈不一致な作品ばかりになってしまうんですよね…(急募 語彙力) (12月15日 16時) (
レス) @page46 id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - ひぃさん» コメントありがとうございます。シリアスなシーンが多い彼なので、創作の中だけでもほっと一息つける瞬間があって欲しいなと思い書きました(^^) お返事遅れてしまいすみません。 (2022年7月8日 0時) (レス) @page49 id: a48c4b505b (このIDを非表示/違反報告)
ひぃ(プロフ) - めっちゃ面白かったです！読み終わったあと、心があったかくなった感じがしました笑 (2021年5月27日 9時) (レス) id: 21a845e247 (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - 凛太さん» コメントありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです(^^) (2020年11月11日 10時) (レス) id: c18fa87c81 (このIDを非表示/違反報告)
凛太 - めちゃ読みやすかったし、面白かったです！！！ (2020年11月11日 6時) (レス) id: caca9cc888 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かにかま | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/0660ea0a061/
作成日時：2020年4月12日 1時
