#20 ページ21
(…あ、切れちゃった。)
手元の水色の糸巻きがカランコロンと乾いた音を立てた。いつの間にか使い切ってしまったらしい。
初めてそれを手渡された時は、こんなにも膨れ上がるまでに糸が巻き付けられているなんて一生掛けても使い切れないんじゃないか、と思ってたんだけども。
仕事を続ける為には、新しい糸を引っ張り出して来ないといけない。…だけど、この店の何処に仕舞われてるかなんて新人の私には分からない。
(女将さん………あ。)
助け舟を期待してチラリと目をやって見ると、彼女は忙しそうにお客さんの相手をしていた。
…暫く待つかなぁ。
椅子に腰かけたまま、ぼうっと窓辺を眺めているとドンドンとそこを叩く音が聞こえてくる。
(？…あ、カンタさんか。)
鍵を開けるようにジェスチャーするカンタさん。指示通りに手を動かすと、彼はそこから部屋に入り込んだ。
(怒られますよ、そんなお行儀の悪いことして。)
カンタ「あー、はいはい。」
と、適当に受け流す。
全く、こっちは教えてあげたってのに。
そんな内心を知ってか知らずか、勝手に話は進められる。
カンタ「…で、何に困ってんの？」
(…へ？)
カンタ「んだよ、母ちゃんが忙しそうだから代わりに来てやったんだろ。」
裸になった糸巻きを顔の前に差し出すと、彼は積み上げられた箱をガサガサといじり出す。
カンタ「えーっと…どこだっけ。」
と、言葉を漏らしながら探している様子を横目に、私はひとつの違和を感じていた。
(…どうしてカンタさんは私が困ってるって分かったんだろう。)
メモ書きを見せた訳でもないのに、確実に私の考えていることを啄むのだ。そりゃクラピカ程鮮明ではないけども。
「あ、あった。」と明るい声。
「ん。」とぶっきらぼうに差し出されたそれを受け取り、ありがとうと伝えてみる。
彼は満足気に微笑んだ後、ハッとしたようにその眉を立ち上げて意地悪に言う。
カンタ「別にお前の為じゃないんだからな！鈍臭いことされても困るから…」
(…本当、よく分からないな。この人。)
カンタ「うっせ、ばーか！」
ほら、やっぱり伝わっている。
出会って半年も経っていないはず。
そんなことって有り得るの……？
クラピカと意思疎通出来るようになるのには一年近く掛かったというのに。
困惑する私の額を人差し指で弾くと、彼はあっかんべぇをした。
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金糖の少女 - 恋愛感情で動きを変えないという解釈…！！わかります！！自分も同じ解釈なんですけど恋愛小説ともなると難しいのでどうしても解釈不一致な作品ばかりになってしまうんですよね…(急募 語彙力) (12月15日 16時) (
レス) @page46 id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - ひぃさん» コメントありがとうございます。シリアスなシーンが多い彼なので、創作の中だけでもほっと一息つける瞬間があって欲しいなと思い書きました(^^) お返事遅れてしまいすみません。 (2022年7月8日 0時) (レス) @page49 id: a48c4b505b (このIDを非表示/違反報告)
ひぃ(プロフ) - めっちゃ面白かったです！読み終わったあと、心があったかくなった感じがしました笑 (2021年5月27日 9時) (レス) id: 21a845e247 (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - 凛太さん» コメントありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです(^^) (2020年11月11日 10時) (レス) id: c18fa87c81 (このIDを非表示/違反報告)
凛太 - めちゃ読みやすかったし、面白かったです！！！ (2020年11月11日 6時) (レス) id: caca9cc888 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かにかま | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/0660ea0a061/
作成日時：2020年4月12日 1時
