【H×H】Silent【クラピカ】

#18 ページ19

(おはようございます。)


女将「おはよう。
じゃあ、いつもの様に頼むよ。」


(はい。)



奥の椅子に腰掛けて、針糸を手元に並べる。今日はスカートの裾上げだ。プリーツ付きだから学生さんかしら。



*




(ふぅ……うわっ！？)



縫い始めに一周回った針先が追いついてひと息着いた時、「わっ！」と大きな声が投げられた。振り返ると、悪戯っぽく笑うカンタさんがこちらを見ている。


(びっくりしたな、もう！)


言葉の代わりにギロリと睨みつけると、少しの反省の色も見せず彼は笑った。



カンタ「驚かせても声出さねぇんだな。」


(だから喋れないんですってば！)


カンタ「そんなに怒んなよ。」


(ふんっ！)




煩く騒ぎ立てるカンタさんの声を聞き付けて、表から女将さんがやって来た。



女将「ちょいとお前、仕事を邪魔するんじゃないよ！」


(そーだ、そーだ。)


カンタ「ちっ。」




ボールを片手に店を出ていった彼を見て、女将さんはまた謝る。何回目かの光景だ。

イラッとくることなんて数え切れないくらいあるけど、彼がいた間だけクラピカ達を送りだした寂しさを忘れられたのは事実だ。



(何だか解せない。……でも、ありがとう。カンタさん。)




初めて彼に感謝した。
……やっぱり解せないけど。

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