番外編#3 予兆 ページ49
許嫁騒動があった数年後、色々と事は変わった。カンタさんが一人立ちし村を出たとともに、仕立て屋は店を畳んだ。女将さんは旦那さんと幸せな隠居生活を送り、職場が無くなった私はクラピカに着いていくことになった。
着いていく…といっても、炊事洗濯等の家事をこなしてクラピカが帰ってくるのを待つ、いわゆる専業主婦のような以前の生活に逆戻りしただけなんだけどね。
私的には今すぐにでも働きたいと思うのだけど、疲れて帰宅するクラピカを見るたびにあの仕立て屋のように働くことは中々難しいんだろうな、と思ったりもする。
…そんなある日、珍しく酔っ払った彼が同僚の方に介抱された状態で帰宅した。
同僚「すいません、開けてくれませんか。」
急いで玄関に駆け寄ると、首まで真っ赤に染まった彼が抱きついてきた。
「…っわ、クラピカ!ちょっと、同僚の方もいらっしゃるんだから!」
クラピカ「んー…」
駄目だ、全く聞く耳を持たない。
無理矢理剥がして床に座らせようとすると、彼は「いいんですよ。」と苦笑いした。
同僚「Aさんのこと、話には聞いてましたから。」
「クラピカが…?」
同僚「酔ってる時だけ話してくれるんです。自分には勿体無い位に出来た嫁だって言ってましたよ。」
「よ、嫁…」
同僚「あれ、違いましたか?」
「あ、いや…そうかもしれないです。」
(実のところ、クラピカとの関係性ってよく分からないんだよね…なんて。)
丁寧に頭を下げて去っていく彼。
私はそっと戸を閉めると、キッチンからコップを持ってきてクラピカに差し出した。
「ほら、お水飲んで。」
クラピカ「…いい。」
「駄目だよ、飲んで。」
クラピカ「ん…。」
ゴクリ、ゴクリ
喉越しの良い音を立てて落ちていく。
そんな姿を見守りながら、ポツリと呟く。
「…私ってクラピカの奥さんなの?」
酔っ払った彼が応える筈もなく、ただ子供のようにニコリと笑って飲み終わったコップを手渡してきた。
(…まぁ、あの仕事第一のクラピカがそこまで考えてる訳無いか。)
そう考える私は、その時から彼の鞄に渡されず仕舞いの指輪があることなど予想だにしないのでした。
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金糖の少女 - 恋愛感情で動きを変えないという解釈…!!わかります!!自分も同じ解釈なんですけど恋愛小説ともなると難しいのでどうしても解釈不一致な作品ばかりになってしまうんですよね…(急募 語彙力) (12月15日 16時) (レス) @page46 id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - ひぃさん» コメントありがとうございます。シリアスなシーンが多い彼なので、創作の中だけでもほっと一息つける瞬間があって欲しいなと思い書きました(^^) お返事遅れてしまいすみません。 (2022年7月8日 0時) (レス) @page49 id: a48c4b505b (このIDを非表示/違反報告)
ひぃ(プロフ) - めっちゃ面白かったです!読み終わったあと、心があったかくなった感じがしました笑 (2021年5月27日 9時) (レス) id: 21a845e247 (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - 凛太さん» コメントありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです(^^) (2020年11月11日 10時) (レス) id: c18fa87c81 (このIDを非表示/違反報告)
凛太 - めちゃ読みやすかったし、面白かったです!!! (2020年11月11日 6時) (レス) id: caca9cc888 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かにかま | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/0660ea0a061/
作成日時:2020年4月12日 1時