失礼な奴 ページ17
あの熱の日の皺寄せにと頑張ってみたけど、やっぱり一人じゃどうしようもないくらいに仕事が溜まってしまったので、編集担当の中村が出向いてくれた。
中村「それにしても、一人の作家が一日休んだだけでこんなに大変になるもんですかね。」
「本当だよ。御社の営業方針に疑問を呈したいところですわ。」
中村「ウチは限りなく黒に近い白でやってるので。」
「グレーじゃんか。」
そんな自虐トークを交わしながら、カタカタと電子盤を弾く音が連なる。
時計の長針が二週ほどした時、彼女は手を止めてソファーに寝転んだ。
中村「ふぅ…きゅーけー。」
「進捗は?」
中村「そこそこです。Aさん程ではありませんけど。」
とは言いつつも、覗き込んだ彼女のPC画面は私に負けず劣らずの文字の羅列が確認できた。やっぱりこの人はやり手だ。流石私が認めただけある。
私もそろそろ休もうかな、なんて考えていると彼女はソファーの表面からつぅーっと何かを摘み上げるようにした。遠目ではそれが何なのか全く分からない。
「何それ?」
中村「髪の毛落ちてました。」
そんな姑みたいなことを。と、苦笑したのも束の間、鋭い質問が向けられる。
中村「…Aさんの髪ってこんなに長くないですよね。」
「確かに。………………あ!」
私の家を行き来する長髪。
その時にピンと来るような人物はたった一人しか居ない訳で…
中村は、急に目線を逸らした私を怪しそうに眺める。
中村「…何ですか、その顔。心当たりでも?」
「い、いや…ベツニナンデモナイヨ。」
中村「片言だし。目が泳いでるし。」
暫くの睨み合いの末、彼女はまるで重要なことに気付いたかのように表情をぱっと変えた。
中村「あ、そっか!Aさんにも漸く春が来たんですね!」
「違うから。っていうか、漸くって何。漸くって。」
中村「いやー、盲点だったなぁ。あと数年は引きこもってるかと思ってました。」
「ちょっと、無視しないでよ。」
「でも、この髪の毛男の人のでしょう。」と勝ち誇ったように尋ねる中村。
「…まぁそうだけど…。」と、口ごもって返すと彼女は揶揄う様に笑った。
中村「いつでも相談乗りますからね。こう見えても私、経験豊富なんで。」
おい、それは嫌味か。
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かにかま(プロフ) - セナさん» コメントありがとうございます。誉められて伸びるタイプなので、そう言って頂けて嬉しいです笑 (2020年6月6日 20時) (レス) id: c18fa87c81 (このIDを非表示/違反報告)
セナ(プロフ) - あまりに面白くて一気読みしてしまいました!素敵な作品をありがとうございます! (2020年6月6日 19時) (レス) id: 9a1a35c746 (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - たまご登りさん» コメントありがとうございます。楽しんで頂けたようで何よりです(^^)ソイヤッ (2020年4月28日 2時) (レス) id: c18fa87c81 (このIDを非表示/違反報告)
たまご登り - めちゃくちゃ良いですね!!!!コミカルさもありつつちゃんと展開がされているところに作者様の賢さが見受けられました!!とても楽しくキュンキュンしながら拝読しました(^o^)ソイヤッ (2020年4月27日 0時) (レス) id: 080b2c3a82 (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - わちこさん» コメントありがとうございます。応援して頂けたてとても嬉しいです(^^) (2020年4月24日 2時) (レス) id: c18fa87c81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かにかま | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/0660ea0a061/
作成日時:2020年3月22日 17時