検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:25,083 hit

ページ3

次の日、Aは言葉通り俺の元へ一人でやって来た


背中の真ん中迄ある艶やかな黒髪に、華やかな納戸色の着物。

大きな漆黒の吸い込まれそうな瞳に形の良い唇


余命二年の所為か、肌は透き通るように白く何処か儚げだった


綺麗な子だと思った



まあそれだけだけど







君は俺に何を望むんだい



そう問うと



「私はA。貴方の名前は何ていうの?」



と至極自然に言われた。



「……」



一瞬、思考が停止した



名前など、聞かれた事がなかった。


人間達は俺の事を皆、教祖様と呼ぶ。


皆自分の事に精一杯で俺の事などどうでもいいからだ。


奴等が求めているのは俺ではなく所詮自分が縋る何か、だ




だけど目の前の女は救いを求めるでも無く、何かを請うのでもなく、



ただ笑顔で俺の名前を聞いてきた



「貴方、神様なんて信じて無いでしょう?

何となく貴方の様子でわかるわ
 

でもそれをどうとも思わない

人間は死んだら無になるだけ。

私もそう思うもの」




「……」



何も、言えなかった。



こんな事は後にも先にも初めてだったから



真っ直ぐと吐き出すこの女の言葉は俺の心の内を射抜いているが、これを認めようか迷った。




俺が何も"感じない"ことを彼女は見抜いているようだが、


特にそれを咎める訳でもなく罵倒もせず受け入れるらしい。


普通の人間なら薄情だと、人でなしだと、俺を心ゆくまで罵るだろうに。





「……如何してそう思う?」



「此処へ通ったって、自分の命が助からない事くらいわかるもの。
神様なんて人間の創り出したものでしょう?」


くすくすと笑うAは、もう自分の死を受け入れているようだった


「ただ、お母様は私が長くないって知った日から、私より歳が下の貴方に縋り付くまでに気が狂ってしまった。
あの御人はとても優しいから。だからせめてお母様の言う通り此処へは通おうと思って。それでお母様の気が紛れるなら願ったり叶ったりだわ。」



そう言ってスっと立ち上がったAは座っている俺の目の前へ来て屈み、視線を合わせた。




「貴方に救いなんて求めないし、極楽浄土もどうでもいい。
今日から私の話し相手になって欲しいの。



私はA、貴方は?」






「へえ。

俺は………童磨だよ」



こうして、俺とAの奇妙な関係が成立した

肆→←弍



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 5.7/10 (149 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
50人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 童磨
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - 七七四さん» ありがとうございます!そう言って頂けて本当に嬉しいです(; ;)気まぐれに現れて書き始めると思うのでその時はまたよろしくお願い致します^^! (2020年2月13日 13時) (レス) id: b76cd08d2c (このIDを非表示/違反報告)
七七四(プロフ) - 完結お疲れ様でした!もう次の小説を考えているところでしょうか。縁がありましたら、次の小説も読ませてくださいね(^o^)。二人の日々のやりとりが素敵でした。そして切ない...! (2020年2月11日 18時) (レス) id: 264392a962 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - あみさん» ご指摘ありがとうございます!修正しました(^^;; (2020年2月6日 17時) (レス) id: b76cd08d2c (このIDを非表示/違反報告)
あみ - 途中で堂磨になってますよ! (2020年2月2日 11時) (レス) id: d53047c08f (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 、さん» すみません(;;)ご指摘ありがとうございます!外したつもりでしたが誤タップのようです、、多分ずっと気づかないままだったので本当に有難いです(^^; (2020年1月26日 11時) (レス) id: b76cd08d2c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2020年1月26日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。