貴方の香りに包まれて

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男の人の家は、アパートの一階角部屋で、俺の家からも十分歩いてこれる距離の場所にあった。




北「ここが俺ん家。」


藤「ボロボロだね。」


北「うるせーわ(笑)鍵開けるからちょっと降りて、って足冷たくないか？」


藤「大丈夫」


北「すぐだから、ちょっと我慢しとけ。」


そう言うとガチャガチャと鍵を開けた。


北「ただいまー。ん？ほら上がれよ。」


藤「‥‥僕、足汚い」


北「気にしねぇから(笑)大丈夫、早く上がれ。うぅーさみぃ！とりあえずストーブと、、風呂だな。」


そう言ってファンヒーターの電源を入れ、湯船に湯を入れ始めた。


北「10分位かかるかなー」


ストーブの前に行け、早く暖まれと急かされ2人横に並んでストーブの前に座る。

ボッっと音がして、灯油の匂いと温かい風に体が包まれた。


藤「あったかい」


北「そーいえば、お前‥名前は？年は？」


藤「たいすけ。年…分かんない。」


北「何処に住んでんだ？」


藤「〇〇コーポ、203号室」


北「〇〇コーポ……あぁ、近くじゃんか！あそこも結構なボロじゃねえかよ。(笑)
俺は北山 宏光。そうだな〜、宏光お兄ちゃんって呼んでいいぞ？」


藤「‥にいちゃん」


北「宏光お兄‥まぁいっか。何かあったらいつでもにいちゃん家に来い。な？」


藤「‥うん。」


北「そしてだな、悪い人間っていうのも世の中には居るから、知らない奴に簡単についていくなよ。」


藤「‥‥」


悪い人間？

ちらりと横を見ると、にいちゃんが目を丸くして焦り始めた。


北「えっ！？いやいや、俺は悪い人じゃないからな！」


藤「‥‥」


北「本当だって！この瞳を見ろって！ちょー綺麗だから。」


藤「自分で言うんだ。ふふっ」


北「お前‥笑うと可愛いのな。」


藤「‥‥」


チラッ


北「いや違う違う。本当だって！俺全然悪い事しないから！ほら、な？信じて。」


藤「うん。ふふっ」

にいちゃんが悪い人じゃないのなんて最初から分かっていたけれど、なんて言ったらいいのか分からなくて、この時の俺はただただ頷くだけだった。


体だけじゃなくて胸がじんわり暖かくなる。


あったかいな‥

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