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〈45〉 ページ45

いただきますとペットボトルの蓋を開けお茶をひとくち口に含みながら、ぐるりと部屋を見渡す。



ハンガーに掛けられたオイル染みのついた作業服

吸い柄のたまった灰皿

ビニール袋に入った数本の空のビール缶

少し埃のたまった部屋の隅

引きっぱなしの布団

枕元に堂々と置かれた数冊の大人の本……


見る限りでは、恋人の影が感じられない事にほっと胸を撫で下ろす




北「ん?きょろきょろしてどした?」



台所から戻ってきたにいちゃんの瞳は少し赤かったけれど、表情は明るかった。


俺が苛み続けた9年間だったように、にいちゃんの9年も同じだったのかもしれない…

その固く凍った氷みたいなものが少し溶けたのならいいな…

にいちゃんの少し赤くなった瞳を見ながらそんな事を思った。




藤「相変わらず女っ気がないね。」


北「うっせー!俺だってその気になりゃ…」


藤「はいはい。」


北「流すなよー」


藤「にいちゃん、今幸せ?」


北「まぁ、不幸では無いな。幸せっていえば幸せなのかな〜。弟の太輔にも会えたしな(笑)」



そう言いながら笑うにいちゃんの目尻のシワに俺の知らないこの9年の時が刻まれている。



もう一瞬たりとも見逃したくない


これからは俺が隣で見ていたい



にいちゃんへの恋愛感情なんておこがましい。
そんな汚い感情はにいちゃんには伝える事は一生無い、ずっと隠して生きていく。


そう自分の気持ちに気付いた時に誓った思いは、
にいちゃんがドアを開けた瞬間に脆くも砕け散った


俺を見上げるにちゃんの姿を目の前にし、全身が発火したように熱くなった


誓いを吹き飛ばすほどの強い思い…



この人を幸せにしたい

この人を愛したい

この人を俺だけのものにしたい…



そんな感情がムクムクと湧き上がっていた


自分勝手でごめん


弟になれなくてごめん

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いろ果(プロフ) - あこさん» あこさん、初めまして♪コメント有難うございます!泣かせてしまい申し訳ありません(TT)でも、そう言ってもらえてとても嬉しいです!続編も亀更新ながら楽しんで書いていこうと思いますので、引き続きお付き合いいただければ幸いです(´∀`*) (2019年3月11日 16時) (レス) id: 8fe91de33d (このIDを非表示/違反報告)
あこ(プロフ) - いろ果さまはじめまして。心に沁みる素敵なお話に泣きながら一気に読みました。続編も楽しみにしております! (2019年3月10日 22時) (レス) id: 2d7ec12d07 (このIDを非表示/違反報告)
いろ果(プロフ) - tsubakichanさん» ただ、今まで真面目だったのでお遊びで書こうとしておりまして…期待に添えなかったらすみません(汗)またお付き合いいただけるよう頑張りますp(^_^)q (2019年2月10日 20時) (レス) id: 8fe91de33d (このIDを非表示/違反報告)
いろ果(プロフ) - tsubakichanさん» tsubakichanさん、今までお付き合いいただきありがとうございました!そして沢山のコメント、本当に励みになりました(*´∀人)ハピエンをモットーとしているので、藤ヶ谷くんの片思いで終わらせたくなー、と(^^) (2019年2月10日 20時) (レス) id: 8fe91de33d (このIDを非表示/違反報告)
tsubakichan(プロフ) - 久々にドップリはまり込んでいた小説でしたので、終わっちゃう…いやだ!いやだ!寂しい!って、思っていたら、っん!?何やら期待できそうな終わり方だな〜って、続編あるんですね!☆太ちゃんが、どう攻めていくのか…凄く楽しみ!ありがとうございます。 (2019年2月10日 7時) (レス) id: 546497211d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いろ果 | 作成日時:2018年9月17日 21時

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