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「 じゃあ 、行くか 」
そう言って彼は車のハンドルを握る。式場までは 25分。
「 朝早かったしちょっとやけど寝ててもええで 」
そのさりげない優しさが私の心をきゅっと締め付ける。真綿は苦しくて
『 んーん寝なくて大丈夫だよ、ありがとね 』
私は彼の隣が似合えてるのかな。似合えてないんだろうなって思っちゃう。
「 そういえば今日俺の弟も来るんよ 初めましてやろ? 」
『 あそうなの!うんうん弟さんとは初めましてだよ 』
「 俺の弟は女たらしのくせに顔はいいからAがとられんか心配やわ 」
私は何処にも行かないから安心してよ。
言おうとしたけど声が出なかった。口だけがぱくぱくと動く。
なんで言えないんだろう、考えたくなくて笑い声を吐き出し続ける。
「 嘘嘘、とられるはずないやんな、そんなこわばった顔せんといてや 」
彼はいつものように笑った。静かにため息を吐いたように笑った。
私は今 、何に笑っているんだろう。
なんで私は今 、彼にこんな笑い方をさせてるんだろう。
冬の寒さも相まって指先と同じように頭も冷えていく。
沈黙が流れ始めると、段々と眠くなってくるもので。
車の中でささやかに流れるBGM 、ほんとにこの曲好きだよなあ
… 〜〜〜 失った時 手に入れた時 気づく幸せがあるのなら ………
頭がやがてぼんやりとしてきて いつの間にか私は眠っていた。
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作者名:しいな | 作成日時:2022年1月19日 18時