No body

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＃或る男の独白３ページ24

「どうして、
　Aの母親が･･･？」

　思わずドアを開けてしまいそうになる。

　だがAにバレてしまう可能性も
　あったため、その日は何もしなかった。

　次の日。

　放課後、例の病院に向かう。

　昨日行った病室へ向かい、
　そのドアを開けた。

　そこには、広大な部屋が広がっていた。

　その中央には。

　木に取り込まれたAの母親が居た。

　手足は木のなかにのめり込み、
　顔や胴体の半分には根が這っていた。

　言葉が出なかった。

　Aは、
　あいつは、
　こんなこと、一言も。

　俺はすぐに病室を出た。

　家に帰ったら、
　あいつに問いただそうと思った。

　なんであの三日間、姿を消したのか。

　なんで母親があんなことになっているのか。

　なんで。

　なんで俺に、言ってくれなかったのか。

　家につく。

　玄関にはAの靴もあったし、
　帰ってきているのだろう。

　鞄を投げ捨て、台所に向かう。

　あいつを見付けた。

「おい、A、どうし」

『轟、おかえり。
　今日こそ、冷たい蕎麦、作ったから。
　あんたの大好物でしょう？』

　続きが、口に出せなかった。

　Aが、
　あまりにも、幸せそうに、笑うから。

　その光景が、
　あまりにも“普通”だったから。

「お、おう。
　楽しみだな･･･。」

　この幸せな日常を壊すことなんて、
　その時の俺には、出来なかった。