帰国 ページ10
はぁ…本っ当に恥ずかしい。人生で1番恥ずかしいかも知れない。
異性から頬にキスなんて、一度もされたことなかった。おまけに未だ太宰様に抱き締められている状態で、私はもう軽くパニックだ。
一見細身に見えても、男性ってこんなに逞しい体なのね…
「ねぇ、A」
『わっ…あんまり耳元で喋らないで、お願いだから…!』
「初心な反応で可愛らしいよ」
私の頭を一撫でしたあと、少し体を離された。
「そんな可愛い可愛い君に、一つ助言しようかな。男の嫉妬は怖いんだよ?よく覚えておき給え」
『……一体何に嫉妬したの?』
「それは、さっき君に食べられていた蟹に…かな」
『嘘だよね?教えくれないの?』
真剣な顔で言う彼だが、明らかに誤魔化している。そのくらい私にも分かる。嘘の精度が酷過ぎる。
「知りたければ、私のことをもっとよく知ってほしいな」
『…分かった』
「よし、期待しているからね。私は明日の朝にはもう帰らなくてはならないから、そろそろ寝るよ」
『案内します、寝室は用意してあるから…』
「おや、君と寝ようと思っていたのに」
『寝ません!』
ーー
ー
次の日の朝。
彼は朝早く帰りの馬車に乗る。見送りのため、私もいつもより早く起きた。
「このまま君を国まで連れて帰りたいよ」
『駄目だよ?誘拐しないでね』
手を握りながらうっとり言うものだから、心配になる。…この人、本当に次期王様だよね…?
「そろそろ時間かな。じゃあね、楽しかったよ。…あと、“ここ”は結婚式に頂くとするよ」
馬車が出発する直前、唇に指を当てられてそう言われた。昨晩、頬にキスされたことを思い出してしまった。
馬の蹄の音が遠ざかっていく中、私は口に手を当てて一人真っ赤になっていた。
ーー
ー
『中也〜、中也〜!』
いない。
お昼頃、砂浜に行って名前を呼んでみるけど、中也の姿が見当たらなかった。かれこれ1時間弱探しているけれど、全く現れる気配無し。
『心を開いてくれたと思ったけど…嫌われちゃったかな』
そうだよね…毎日来てたのに、急に来なくなったら、怒るのも無理はないよね。仕方ないのかも知れない。
『せめて最後…もう一回くらい、会いたかったなぁ』
こんなに悲しい気持ちになったのは久しぶりだ。その日は砂浜に三角座りになって、ぼんやりと海を眺めていた。
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ヨモギ雲(プロフ) - チョコさん» こんにちは、コメントありがとうございます!4期見ています!出番が少ないながらも、相変わらず中也さんかっこいいですね…!✨ (2023年3月30日 23時) (レス) id: 8cd691db0d (このIDを非表示/違反報告)
チョコ - この話し面白くて見てます!そういえば、文スト4期始まっていますよ!! (2023年3月21日 13時) (レス) @page25 id: d38db6c248 (このIDを非表示/違反報告)
ユエ - こちらこそ返事ありがとうございます。作者様のペースで大丈夫です。今後も期待しています! (2021年6月29日 18時) (レス) id: 007fbd0124 (このIDを非表示/違反報告)
ヨモギ雲(プロフ) - ユエさん» コメントありがとうございます!ダラダラ更新で本当に申し訳ないです(汗)頑張ります! 7月からでしたっけ…?一期がまた見られるらしいですね、楽しみです! (2021年6月29日 0時) (レス) id: 4c88579f44 (このIDを非表示/違反報告)
ユエ - いつも楽しませてもらってます。そういえば文ストの再放送がやるみたいですよ。 (2021年6月28日 7時) (レス) id: 007fbd0124 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヨモギ雲 | 作成日時:2021年1月22日 13時