手を翳しても見える星 (ページ8)

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学年1位を取っても「まあ、松村くんだし」と言われ、たまに成績が下がると、憂さ晴らしの絶好の機会だと俺のことを良く思わない教師から、ネチネチと小言を言われ続ける。相談できる友達も居ない。

それが3年間。

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「友達…いなかったから」
「ふーんそうなん」

友達がいなかったことなんて思い出さなくても分かりきっていたことなのに、余計なことまで思い出してしまった。そんな俺の気持ちは露知らず、京本は答えを聞いてすぐに飽きたのか「北斗ってゲームとかやる？」と別の質問を投げかけてきた。

「いや、やらない」
「じゃあ漫画は読む？」
「読まない」
「アニメは？」
「見ない」

会話のキャッチボールも碌に出来ないことに小さく絶望する。同級生との会話なんていつぶりだろう。今まで会話出来ていたことが奇跡だったんだ。

「あー、えっと、京本は漫画とか好きなの？」
「好き。めっちゃ好き」

かろうじて捻り出した返しに、京本は待ってましたと言わんばかりの表情をして、流暢に話し出した。

漫画のタイトルまでは聞き取れたが、内容はさっぱり分からない。でも、楽しそうに話す京本を見て、いいなと純粋にそう思った。

今の俺にはここまで夢中になって話せるようなことがない。それにしてもこの短い時間で京本のいろいろな表情を見た気がする。

ぼーっと興奮しながら早口で捲し立てる京本を眺めていると、不意に目があって、京本はピタリと喋るのをやめた。

「あ、俺喋りすぎた？北斗漫画読まないのに分かんないことばっか言っちゃった」
「いや、別に。楽しそうに喋るなあって」
「あはは、好きなことになると止まれないんだよね」
「そんなに好きなのね」
「めっちゃ好きだよ。家にもグッズいっぱい置いてあってさ、」
「へえ」

あれ？出来てない？会話のキャッチボール、出来てない？なんか楽しいかも。俺、今すごく普通だ。

「あれ、2人とももう仲良しな感じ？」
「ジェシー先生、」
「おかえり〜」

帰ってきたジェシー先生は、「もう友達になったみたいで先生ウレシー！」とにこにこしながら自分のイスに腰掛けている。

「友達…」
「え、北斗友達じゃないの？」
「いや、そういう訳じゃないけど」
「こんな小さなクラスで友達にならない方が無理だから」

あんなに出来なかった友達ってこんな簡単に出来てしまうんだ。京本の方を見遣れば、いつも通りのような表情をして首を傾げてくる。それが何となく嬉しくなった。