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音の正体はどうやら椅子が倒れる音だったようだ。誰かが立ち上がって倒れたらしい。
そこそこに大きな音だったため、自分でも思っていた以上に体がびっくりしたらしく、さっきから動悸が止まらない。

前の席の女の子がもう一度俺の方へ振り返って「松村君大丈夫?」と声を掛けてくれたが、返事はできなかった。



「っはぁ、はっ、ひ、っ」

乱れた呼吸を必死に落ち着けたくて、胸の辺りをギュッと掴みながら、そのまま教室を飛び出してきてしまった。
あ、まずい、カバンの中に薬、持ってきてない。どうしよう、どうしようどうしようどうしようどうしよう。
教室のドアはガラスの部分があるから、ここからだと俺の姿がどうしても見えてしまう。そうじゃなくても、飛び出してしまったから、心配した誰かがこっちへ来てしまうかもしれない。

そうだ、保健室。確か一階の突き当たりにあったはず。
立ち止まってから今度は慎重に右足から歩き出す。ここで間違えると初めからやり直すことになってしまう。別に誰が決めたわけじゃないけど、右足から歩き始めないと落ち着かないし、気持ち悪くなる。

階段は左足から。いつから決まったのか覚えていない、細かな自分ルールに従いながら保健室を目指す。

ずっと下を向きながら歩いていくと、突き当たりの教室に辿り着いた。保健室、合ってる。もう一歩進んで見てみても保健室と書かれている。間違いない。10歩下がってからもう一度10歩進んで壁を見ても保健室。大丈夫。入っても大丈夫。本当に本当に。あ、でも不安かもしれない。下を向いてからもう一度保健室か確認してみる。うん、合ってる。




「あれ、北斗くん。どうしたの?入っておいで」


着いてから10分、ずっと保健室に入れないままでいると、中から先生が出てきた。

促されるまま保健室に入り、椅子に座らされる。
あれ、そういえば何のために保健室に来たんだっけ。
そうだ、薬。

「薬、薬を忘れて、あの、大きな音で、」

駄目だ。思考がまとまらないまま話すとごちゃごちゃになるんだ。焦る俺を見た先生は「大丈夫、落ち着いて話そう」と優しく声を掛けてくれた。

「一旦深呼吸しよう。話せるようになったら教えて?誰も急かしてないよ」

「…はぁ、すみません… 緊張、とか不安でちょっと気持ち悪くなったんですけど、その時に椅子が倒れてびっくりして、飛び出しちゃって…」
「そっか。北斗くん薬持ってる?ポッケの中とか」
「あ、慌てて来たせいで忘れて、戻らなきゃ、」

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作者名:とほほ〜 | 作成日時:2023年5月8日 1時

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