小悪魔プリンス (ページ7)

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07. ページ7

k『暗くなっちゃいましたね』

閉店近くまでいて、店舗の外に出た頃には、すっかり陽が落ちていた。

「寒っ」

今日の天気予報は晴れで、気温もそんなに低くならないって言ってたから。
だからトレンチコートにしたのに。

k『先輩。』

並んで歩く彼が、手を出した。

「……なに」

k『手、繋ましょうよ。
こう見えて温かいっすよ？』

どう見えてだよ。

思わずつっこみそうになったけど。

「いや」

そう返すのが、正解だと思った。

k『ですよね〜やっぱだめかぁ(笑)』

くしゃくしゃに笑いながら、そう言った彼の。

後頭部を眺める。

ねぇ。

例えばそれは。

どうゆうつもりで言ってるの。

へらへらしてたかと思うと、次の瞬間。
視線が鋭くなったり。

先輩せんぱいって、うるさいくらいまとわりついたかと思うと、急に静かになって、遠くのその先を見ていたりするから。

あたしは。

そんな彼の動きを、つい目で追ってしまう。

声を、探してしまう。

笑いかけてほしいと、思ってしまう。

『まり。何してんの？』

聞き慣れた声がして。

振り向くと、やっぱり先輩だった。

「仕事の帰りです。先輩もですか？」

『そ。あ、飯でも行く？』

そう言いながら、ちらりと隣に視線をやると、

『そうゆうんじゃないよな(笑)』

意地悪に笑った。

k『あ。俺かえ、』

「今日は先約があるので。また改めて」

『ん。じゃあまた。』

片手を上げると、振り向きもしないで歩く様が。

スマートだし、やっぱり先輩らしいと思った。

k『彼氏……とかですか？』

「とかって何よ(笑)」

k『ですよね(笑)え……と、』

ねぇ。

もしかして。だけど。

あたしの、思い違いでなければ。だけど。

「直帰でいいって言われたし。
ご飯行く？」

顔を上げた彼が、きょとんとして。

k『え？だってさっき先約あるって』

「言ったね」

k『いんすか？』

「先約って。ゆうた君のコト」

大きく目が開いて。

次の瞬間、くしゃくしゃな、大きな笑顔をみせた。