小悪魔プリンス (ページ28)

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仕事おさめの、早い帰り道。

k『やっぱり実家とか……帰るんですか？』

そう言った彼が、ぎゅっと手をにぎった。

「言ってなかった？」

不安な時。

何か、言いたいコトがある時。

彼は、どこかに強く触れる。

「家、親いないの。
弟が家に来るだけ」

k『え、そうなんすか』

「ゆうた君は？どこの人だっけ」

k『俺、姉ちゃんがいるんですよ。
だけど、海外行ってて。しかも、連絡とかぜんっぜんとってなくて。
家も親いないんで、1人みたいなもんです(笑)』

そういえば。

知り合った頃に、聞いた気がする。

単純に、同じだって思って。

でも、深く聞かなかった。

思い出したくない過去も。
あるから。

「家……来る？」

ぱっと顔を上げた彼が、

k『いんですかっ？！』

って。子供みたいに笑った。

「弟居るけど……それでよければ」

k『いっす！むしろ会いたいっす！』

「ふふっ(笑)
明日は掃除してー、買物行って……
夜ご飯にはおいで？」

k『はいっ！お願いします！』

・

・

・

r『だれ？』

「だから。言ったでしょ？ゆうた君」

r『おねえ。これが彼氏なん？
おねえの彼氏ってこれなん？』

玄関に出たあたしの後ろにぴったりくっついて。

彼を見るなり、失礼な言葉を放つ。

「ごめん。悪いコじゃないの(笑)」

弟の言葉を、どう受け止めてるのか分からないけど。

やっぱりにこにこしながら、

k『えっと、なに君でしたっけ』

とか。弟に話を振っている。

「適当に座っててー」

キッチンから2人の様子を盗み見ながら、夕飯の仕上げをしていると、

k『弟さんもイケメンですね。
姉弟って感じです』

って。袖をまくりながら、隣に立った。

「そう？ゆうた君トコは？似てる？」

一瞬。
短い間があって。

k『やー……どうっすかね〜(笑)』

って、おどけたから。

抱きしめたくなった。

テレビに夢中になってる弟の姿を確認すると。

彼の、横顔に。

短いキスをする。

k『ぅわっ』

構えた彼に、

「ごめん。したくなった」

って言ったら。

k『み、見られたらどうするんすかっ』

って、返ってきたのに。

k『もう1回……したいです』

下唇を噛んで、俯く彼が。

たまらなく

愛おしいと思う