小悪魔プリンス (ページ21)

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21.　ーanother sideーページ21

「ちょっと青年」

k『あ、はいっ』

「その持ち方やめようか」

k『え？』

自分の手元を確認すると、レディースのマネキンの、ちょうど膨らみを。
両手でしっかり持っていた。

k『や、あ、なんかすみません』

店内の通路を歩きながら、ミカ先輩とのやりとりを見ていたお客様に笑われた。

「お兄さん面白いわね(笑)」

k『面白いですか？(笑)
すみません。気をつけます！』

「青年さ、アウターのディスプレイ直した？」

バックルームに入ると、そう聞かれて、
その事自体を忘れていた事に気がついた。

k『まだ……でした』

「……やってこーい」

k『はいっ。すみませんでしたっ』

・

・

・

「何かあった？」

店舗を出ると、ミカ先輩が顔を覗き込む。

k『さすがっすね(笑)』

「や。青年分かりやすすぎだからね？」

k『え、そうでした？』

k『ここ。先輩と座ったんですよ』

駅前の、珈琲ショップで。

あの日を思い出した。

k『先輩がよそよそしくなっちゃって。
あ、俺が変な事したからなんですけど。
このまままた遠い存在になっちゃうのかな〜って思ったら、それすげー嫌だって思って。
で、先輩呼び出したんです。ダメもとで。
けど来てくれて………』

つらつらと話すのを、全部、ちゃんと聞いてくれた。それから、

「青年さ、気持ち悪いくらいまりの事すきなんだね(笑)
で？そんなまり先輩と何があったの」

って、珍しく、柔らかに言う。

k『俺見たんですよ。その………先輩が、そうゆう所から出てくるの。
あ、結構前の話ですけど。
俺初めて先輩見た時、わ〜ってなって。
研修で回ってる時だったんですけど、歩き方とか、お客様と話す時とか、ディスプレイも上手だし、何かもう……全部わ〜ってなっちゃって。
この人の近くに居たいなって思って。
でもきっかけがなくて。
その先輩が、ホテルから出てくるの見ちゃって。あ、先輩きれいだし、彼氏とかいるの当然なんですけど。
何でなのかすげーショックで。
で、その彼氏さんと、この前一緒に居たんですよ。先輩の頭なでたり、めちゃめちゃ優しい顔で先輩の事見るんですよ。
それって好きですよね？彼氏さん先輩の事好きですよね？』

思ってたことを全部話すと、それを全部聞いててくれた先輩が、

静かに笑った