小悪魔プリンス (ページ17)

今日:10 hit、昨日:6 hit、合計:45,199 hit

17. ページ17

k『お疲れ様ですっ』

昼休み。

いつもの様に飛んできた彼に、同僚が早速ツッコむ。

「岸くん。いつも以上に気持ち悪いんだけど。何かあった？(笑)」

k『気持ち悪くないですよっ(笑)
知りたいですか？』

「や、だいぶキモいよ。
なんなの。早く言え(笑)」

ちらり。
と人の顔を伺って、

k『先輩の。彼氏に。なったんですよっっ』

「……………、」

k『あれ？聞こえました？』

次の瞬間。
同僚がすごい速さであたしを振り向くと、

「えっ？なに？ついに？ついになったの？
男と女になったの？！
やーよかった。で？どうでした？」

「なってない」

「へ？」

「彼とはなんもしてないっすよ」

今度はゆっくり彼を振り向いて、

「してないの？めでたく彼氏になったのに何もしてないの？何それジョーダンでしょ」

ずっとにこにこ……にやにやしてた彼が、

k『しましたよっ。ち……ちゅーしましたよっ』

さらににやにやする。

「………まり。後で詳しく報告」

そう言うと、勢いよく珈琲を飲み干した。

・

・

・

「絶滅危惧種なんじゃない」

ラーメン屋の端っこで、週末のコトをありのままに話すと、ぽかんとされた。

「絶滅させてしまえ」

「あたしも一瞬絶やしてしまおうかと思ったけど(笑)」

「よく我慢できたね。や、待って？
そもそも今の若者ってそうゆう欲ないの？」

「どうなのかね。
とりあえず、そのせいであたしはずっともやもやしてるんだけど」

「それはするよね。
でも意外。あの感じだとがっつきそうなんだけどなー。違うんだね(笑)」

・

・

・

笑いだしたあたしの腕を抑えつけると、
きれいな顔が近づいて。

もう片方の手で、頭を固定された。

鼻が触れそうな距離で、何か言いたそうに口を開いたけど。

それを飲み込むみたいに、唇が触れた。

ゆっくり離れると、

k『もう1回していいですか』

そんなコトを言うから。

身体のどこなのか解らない部分が、きゅうっとなって。

泣きそうになった。

彼で、よかった。

彼と会って。言葉を交わして。
触れるコトができて。

それは、偶然で。
小さな奇跡で。

もしかすると、必然だったのかもしれない。

もう1度。

静かに唇が触れた