小悪魔プリンス (ページ12)

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k『マジ寒いっすね』

交差点の信号が点滅を始めて。

立ち止まった彼が、コートの襟を立てて肩を上げた。

「ね」

一応返事をしながら、彼の横顔を盗み見る。

＿＿＿彼を知ったのは。

まだ汗をかくような、初秋だった。

陽のヒカリ照らされて、きらきらとヒカル。

何か、すごく大切なモノみたいに。
眩しかった。

男の子にしては線の細い、白い肌が。
可愛いという言葉で表現しても許されそうな。

そんな。

男の子だったのに＿＿＿

信号が青になったのを確認すると、歩き出した彼の。

後頭部を眺める。

休み明けに出社した彼の、黒い髪が。

纏う雰囲気までも変えたみたいで。

あたしは、しばらく慣れるコトが出来なかった。

k『何してるんすか(笑)』

顔だけふり返ると、口元を上げて笑う。

その表情に、見惚れて。

うまく息が出来なくなるから。

思わず、顔を逸らす。

k『先輩っ、見てくださいっ！花火っ』

彼の視線の先に目をやると、遠くに上がる花火が見えた。

「あ、」

k『なんすか？』

「今日イベントがあるって何かで見たわ。
何処だったかな……、」

k『近くで見たかった〜。
てか冬に花火っていいですね』

「何だろう。得した気分」

『なんすかそれ(笑)』

皺をよせて笑う彼を。

あたしはもう直視できない。

どうしても。
その笑顔を手に入れたくなる。

　

どうしても。
その手に触れたくなる。

どうしても………、

「っ、」

手袋を忘れてしまった手に触れたモノが、
確認しなくても、彼の手だと分かった。

のに。

思わず。

それを離してしまった。

k『や、違うんですよっ。すみませんっ
あの、これは変な意味じゃなくてっ』

慌てだした彼に、何て言えばいいのか分からなくて。

「あ、うん。大丈夫(笑)じゃあ、また」

彼の表情も見れずに、駅まで急いだ。

ちょうど停まっていたバスに乗りこむと、
窓から花火が見えた。

ゆっくり息をして、彼の触れた手をにぎりしめる。

いつだったか。

きれいですね。と彼が言った、オーロラのストーンが。

爪の上で、静かにひかった