15 ページ15
気づいてた。
と言うより。
そうだといいな。と、思っていた。
ほとんど毎日顔を合わせるのに、あたしも、
もちろん彼も。
いつかの出来事が、なかった事のように。
淡々と、日々を過ごさなきゃいけなかった。
n『ねぇ。』
朝の掃除で、駐車場を掃いていると。
ずっと聞きたかった声が、近くでした。
顔を上げると、同じようにホウキを持った彼が、
n『今日暇？』
静かに、あたしを見る。
「はい」
n『それ貸して？』
チリトリを指して、2歩。近づくと。
あたしの手から取り上げた。
その、一瞬。
間違えて、ぶつかったみたいな。
風が、通ったみたいな。
それを、キスと呼ぶのか。
解らないけど。
n『続き。したいんだけど。』
「え？だって…、」
n『だって？』
その表情は、さっきから。
1つも変わらない。
「こんなことやめようって…
二宮くん言ったよ？」
n『……やっぱり。』
ホウキの縁に顎を乗せると、
n『あなた。ガッチガチに固まって。
めちゃめちゃ震えてたの。』
「……、」
n『気づいてなかった？』
そう、なのか。
だから？
だからあの時。
止めたんじゃなくて、止めてくれたんだ。
「ごめんなさい、あたし……」
n『一人で勝手に帰っちゃうし。
それから避けられてるし。』
「ちがっ、あれは、」
s『終わったー？』
駐車場の反対側から、櫻井さんが大きな声を出して。
こっちに向かって来るのが見えた。
n『相手が。俺でよければ。』
そう言うと、向こうに歩きながら、
n『終わったー。』
大きな声を出した。
なに、それ。
俺でよければ。
じゃない。
いつも、いつも。
あなただから。
なのに。
自惚れてみても、いいのかな。
あたしの、初めての片思いは。
始まったばかりで。
それが、叶うのか。
そんなことは、解らないけど。
2人の後を、急いで追いかける。
s『何か…もめてた？』
n『もめてたっけ？』
「……特に」
ふり返った彼が、静かに。
口だけで笑った
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 25人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：とあ | 作成日時：2018年9月20日 21時
