ハツコイー2ー (ページ6)

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a『その先輩がね、』

今日は、具合がよくなくて。

相葉くんの声が、あんまり入ってこない。

廊下の途中で、

a『まりちゃんっ』

って声が聞こえたけど。

前から歩いて来た子とぶつかって、教材をばらまいてしまった。

「ごめんなさい。ぼーっとしてて、」

集めてその子に渡すと、

「こっちこそ。ありがとう」
って、頭を下げて先を行ったのを見て、立ち上がる。

と、ふわりと景色が揺れて。

次の瞬間。

何かに、ぶつかった気がした。

ぼやける視界の向こうで、名前を呼ぶ声が聞こえる。

a『まりちゃん。分かる？』

「相葉くん？」

a『うん。俺の顔、見える？』

だんだん、視界が戻ると、いつもの顔にほっとする。

a『びっくりしたよー。
貧血の薬ちゃんと飲んでる？調子悪いなら言ってよ』

「ごめん、」

カラカラと扉が開いて。

s『起きた？』

って、先生の声が聞こえた。

a『翔ちゃん来たからね』

小さな子をなだめるみたいに、柔らかな笑顔で話す。

カーテンの隙間から顔をのぞかせると、

s『相葉は戻って？
俺次授業ないから、ついてるよ』

って、椅子に腰かけた。

a『終わったら来るからね？
翔ちゃん任せたよ？』

s『看護師の先生もいるから(笑)』

「相葉くん。ありがと」

小さく手を振ると、カーテンの向こうへ行ってしまった。

s『落ちついた？』

「うん、」

s『後で家まで送るから。
もうちょっとここで休んでて』

櫻井先生。って、カーテンの向こうから声がかかって。

職員室に行って来るので、ちょっと外します。
って、看護師さんが出て行った。

「ありがと」

s『ん？』

「ここまで、連れて来てくれたんでしょ？」

s『あぁ。俺じゃないよ(笑)』

って、くすくすと可笑しそうに笑う。

「え、相葉くん？」

うぅん。って、首を横に振って。

s『あいつ。格好よかったよ？』

「あいつ……？」

s『俺、2人の後ろ歩いてたの。
したら急に倒れてさ。
抱えようと思ったんだけど、俺の後ろからすごい速さで通り過ぎてった奴がいて』

視線を、窓にやりながら。

s『俺担任だし、連れてくって言ったんだけど。あんたはいーから。って、お前抱えてさ。
傍観してた奴らに、どけよ！って。
あいつが大きな声出したの、初めて見たよ』

心臓が、早くなる。

s『二宮は。
お前のヒーローなんだな』