ハツコイー2ー (ページ1)

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n『ちょっと寒いね。』

いつものバイトの帰り道。

くしゃみが2つ、出た。

「うん…」

n『これ着な。』

自分の着ていたチェックのシャツを脱ぐと、
ぐいっと押しつけた。

「え、いいよ。
二宮くんが風邪ひいちゃう」

じっとこっちを見てから、

n『別にいいよ。
また来てもらうから。』

って、何でもないふうに言った。

「な、なにそれっ。やだよ(笑)」

n『いいから着なさいよ。』

「………ありがと」

n『ん。』

今日は、ボーダーのティシャツを着てるから。
ちょっととんちんかんな格好になったけど。

彼のシャツを着れるコトに比べたら、そんなコトはどうでもよかった。

後ろから、バイクの音が聞こえると、

n『危ないからこっち。』

腕をひかれて、二宮くんが歩道の外側に回った。

「ありが、と」

そう言えば。

「バイク。乗ってたよね？」

n『乗ってるね。』

「何で最近乗らないの？」

ふいっと向こうの方を見ると、

n『一緒に。帰れないじゃん。』

って、何処かへ向かって言った。

「………え、」

n『そうだ。相葉くんがさ。』

　

や、今話題変えるトコ？

違う違う違う。

掘り下げるトコでしょ？！

「……相葉くんが…なに？」

ふははははっ(笑)

聞いたコトのないくらいの、大きな声で。

1人で笑いだした。

「なななななに？」

n『まりさんて、期待を裏切らないよね(笑)』

「……どうゆうこと？」

n『ごめん(笑)
すきだなーと思って。』

くふくふと笑い続ける彼を。

どんな顔で見たらいいのか。

ただ、分かるのは。

あたしのすきと。

今の彼の「すき」には。

違いがあるということ。

それと。

少なくとも、彼に。

嫌われてはいないということ。

困って、固まっていたら。

n『早く帰ろ？(笑)
ほんとに風邪ひいちゃう。』

って、手をにぎった。

彼の匂いの、彼のシャツと。

彼の温度の、彼の手と。

幸福が、急に押しよせて。

目まいを起こしそう。

「あ、」

n『ん？』

「空」

n『満月だ。』

「うん」

n『明日も歩いて来よー。』

「どうして？」

n『晴れるから。』

それは。

n『一緒に。帰れるでしょ？』

月光に照らされたアナタは。

いっそう。

儚さをまして。

つないだ手を、

強くつかんだ