10. ーr .nー ページ10
一瞬だった。
人が、人を好きになるのに、時間なんてかからない。
俺は。そう思う。
・
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・
学校からも、家からも近いトコロで、
時給もそれなりで、ダルくない仕事。
そんな、動機もやる気もない場所で、
彼女をみつけた。
r『永瀬です。よろしくお願いします』
普通、作ってでもいいから笑顔向けるだろ。
大人なんだから。
なのに、あなたは。
ちらりと横目で見ると、黙って頭を下げた。
肩にかかる髪を、しっかり耳にかけていて、
むき出しになった小さな顎や、キレイな形の耳に。
言葉をのんだ。
・
・
・
「体調、悪いんじゃない？」
その日はずっと、頭が痛くて、ふわふわしてた。
俺に、興味なんてないと思ってた。
俺のコトなんか、視界にも入ってないと思ってたのに。
r『ちょっと……しんどいっす』
「帰ったら？」
そう言いながら、首に触れると、
「熱、あるじゃない」
はらりと落ちた髪を、耳にかけた。
r『彼氏、います？』
勝手に。言葉が出てた。
「………いない、けど」
r『連れてってもらえませんか』
「え？」
r『帰っても……誰もおらんし。だめですか』
自分でも、何言ってんだって思った。
頭おかしい奴だって、怖がられると思った。
「いいけど、」
止められるわけがなかった。
彼女も、馬鹿じゃないから。
きっと、どこかで。承知したんだと思う。
r『内田さんと、してみたかったんですよね』
「そう、」
嫌がりもしないで、俺を受け入れたあなたを。
酷い人だと思った。
だから。
せめて。
俺の気持ちが、彼女に伝わらないように。
彼女を、好きにならないように。
言葉を、のみこんだ。
・
・
・
「誰にも、触れてない」
男の家から出てきた彼女が、そう言った。
2時間近く、そいつの家で過ごして、
触れないコトなんてあるのか。
例えば、彼女が。嘘をついていたとして。
でも、俺には。責める権利なんてない。
r『俺が……壊れそう、』
ずっと、隠していた気持ちを。
隠しきれていなかった気持ちが。
もう、
のみこめなかった
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作者名：とあ | 作成日時：2019年5月7日 19時
