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帰り道は、いつもバスに乗る。
相変わらず二宮さんは、タクシー代だから。
と言って、多すぎる額を封筒に入れるけど。
乗り慣れていないタクシーよりも、ゆっくりと時間が流れているような、どこか懐かしさを感じられるような。
そんな雰囲気の、バスに乗りたくなる。
だから、多すぎるそのお金は。
彼に合わなくなる時。
返そうと思う。
遅い時間の車内は、やっぱり空いていた。
指定席になりつつある、1番後の席に腰をおろす
と。
わざとらしく音をたてて、隣に人が座った。
空いてるんだから、離れて座ればいいのに。
心の中で言い終わらないうちに、
r『あの人誰？』
「っ、」
居るはずのない、永瀬君の声がした。
r『さっきの男の人。誰？』
「………つけてたの？」
彼の方を見ると、
r『そうだよ？』
いつもみたいに、涼しい顔で、悪びれもなく、そう言った。
「………、」
r『…………なんで』
「え？」
r『こんなコトしたら、嫌がられるの分かってるよ』
睨むようにこっちを見ると、
r『好きにならない様に。
あなたを、好きにならない様にって思ってた』
「………、」
r『だって。
あなたが、俺を好きになることはないから。
でも、』
伸びた手が、頬に触れて、
r『他の人に触れるのを想像したら。
俺が、壊れそう』
唇を、ふさいだ。
「触れて、ない」
r『え？』
「誰にも。触れてない」
r『………』
永瀬君が、信じても、信じなくてもいい。
ただ、二宮さんの存在を。
彼にどう伝えればいいのか解らなかった。
停車の表示がきり変わって、アナウンスが流れる。
降車ボタンを押しながら、
「一緒に、降りる？」
r『……いいの？』
「永瀬君が、嫌じゃなければ」
あたしと、
永瀬君も。
同じなのかもしれない。
・
・
・
r『おやすみなさい』
その日、初めて。
彼の口から、その言葉を聞いた。
あたしの、
すぐ隣で
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作者名：とあ | 作成日時：2019年5月7日 19時
