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k『こんばんは。』
在庫を調べていると、声をかけられた。
なぜなのか。
すっかり覚えてしまった声の主を、確認するために振り向く。
「こんばんは。薬……まだありますよね？」
k『ん、ある。』
「他になにかお探しですか？」
制服の胸元を、目を細めて見ていた彼が、
k『内田さんに。お願いがあるんだけど。』
「……なんでしょう」
k『つき合ってもらえないかと思って。』
表情1つ変えずに、そんなコトを言った。
「え、と、」
k『あーそうじゃないな。何て言うかな。
アナタの時間を、僕に貸してほしい。』
薄い茶色が、ゆらゆらと揺れて。
それでもしっかりと、こちらを見ている。
「解りました」
きっと、彼は。
悪い人ではない気がした。
例えばもし、悪い人だったとしても。
あたしには関係のないコトなのかもしれない。
k『ありがと。』
「仕事があるので。夜の時間になりますけど」
k『いつでもいいよ。アナタに合わせる。』
「………あの、」
k『ん？』
「いえ。後ほど聞かせてください」
k『コレ。連絡ちょうだい？』
小さな紙を手のひらに押しつけると、
ポケットに手をつっこんで歩いて行った。
手の中の紙も、彼のまとう空間も。
あの日と同じ、甘い匂いがして。
その匂いの正体を、考えた。
・
・
・
シワがついてしまった紙には、名前と電話番号と、会社の名前みたいなモノが書かれていた。
そこへ電話をかけると、もちろん彼が出て、
伝えられた住所まで、タクシーで向かった。
k『来てもらってごめんね？』
タクシー代。と言いながら、1枚。
お札を渡された。
「………あの、」
まずもって。あたしは。
何をしたらいいのか。
k『ココに。居てくれたらいいから。』
キッチンに向かった彼が、珈琲の匂いをさせながら戻ってきた。
k『どうぞ。』
「いただきます」
床に散らばった、ノートや鉛筆をよけて。
ソコに、腰をおろす。
「あの、」
k『ん？』
「身体は必要ですか」
ブフっと吹き出した彼が、咳込みながら、
k『ソレはね。多分いらない。』
やっぱり、
曖昧に笑ってみせた
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作者名：とあ | 作成日時：2019年5月7日 19時
