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5. Fside ページ6

｢___って感じなんだけど、分かる？｣

渉の説明をまとめるとこういうことだ。

そいつは中学の時、アイドル部に入部し
1年にして部のトップを取るほどの人気だった。
カッコよくて、クール。
滅多に笑うことの無い、俺様系だったとか。

そんな大人気の中、突然3年でアイドル部を辞め
誰とも話さず一人でいる事が多くなった。
同じ部の人達のステージにも顔を出すこともなく
周りからは、
(アイドルを嫌いになったのでは無いか)
と噂されている。

それなのに何故、アイドルになりたいと思う
者が集うこの高校にわざわざ転校して来たのか。

何の意図が有るのだろうか、と思っているらしい。

辞めた理由については、渉も知らないんだと。

｢うん、ありがと。分かったよ。｣
｢良かった。｣

話が長い事と途中噛みすぎだった事は
俺の秘密にしておこう。

ただ、説明を受けたのはいいが
あまり興味が湧かない。

俺には全然関係無いからさ。
別にそいつと仲良くなる事なんてこの先恐らく
無いだろうなあ。

なんて、漠然とした思いが浮かぶ。

……そんな事より

｢あれ、今日1限目テストじゃ無かったっけ。｣
｢数学の小テストだよ。太輔やってないの？｣
｢やってるわけ無いじゃん。｣

思わず、溜息を漏らしたくなる。
昨年のテストは散々だったから、今年は
頑張ろうと思ってたのに。

いや、まだ時間あるしいけるか。

急いで教室へ入ろうとしたその時。

｢なあ、お前っ。｣

急な方向転換に、足のバランスが乱れる。
不安定な体を腕は支えようとして
声の主へと咄嗟に手を伸ばす。

気付いたときには、相手の両手を
しっかりと掴んでいた。

｢ごめん、大丈夫か？｣

先程の声の主が心配そうに言った。
薄く落ち着いた茶髪に、大きな瞳。

こいつって、さっきあそこにいた、確か…

｢それより、お前ってたい_｣
｢君誰だっけ？｣

大きな瞳がまた大きくなった。

俺の放った言葉に、相手の手から力が抜け
何か言いかけた口はぽかんと開けたまま。

数回瞬きを繰り返してから、下を向き
もう俺と視線を合わせることは無く
俺の手を静かに解いて隣の教室へと消えた。