お風呂の中でひとり考えた。 (ページ4)

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「笑窪、窪み、どっち？」

ああ、これ？と彼は片頬を上げる。

「笑窪やで。」

ふわり、そう笑うのだけれどその顔がどうも私には眩しくて。

冬眠しているクマが春の訪れに目覚めて太陽光を浴びた時みたいに、目の前が白く眩む。

「ごちそーさん。」

は、と気づいた時彼は食器をゴシゴシと洗っていた。

「今度、なんか、奢る。」

「いいよ、お金無いんでしょ？」

「ふは、バレた？」

ああ、もう笑わないで。人の幸せそうな笑顔って、羨ましくて自分が惨めで嫌になる。

小さくため息をついて目を逸らした。

「ちゃんと戸締りせえよ。」

「あ、関西弁。」

それがどうした、と言わんばかりに彼はキョトンとしている。

「標準語と関西弁、混じってるなあって。」

「あ、ああ。まあ、そんなもんちゃう？」

一瞬、彼が戸惑ったような気がした。空気がシン、と張り詰めたような。

「おやすみ」

「………おやすみ、なさい。」

そう言えば重岡さんの声って特徴的だったなあとか。

そんなことよりもやはり、あの眩しい笑顔を思い出してまた目が眩む。

「…………だめだ、」

眩しいのは、悪い事じゃないけれど。
眩しすぎるとその分影は濃くなる。
眩しい人は、同時に闇に落ちているのだ。

いつか読んだ本のフレーズを思い出し、私にはあんな眩しい笑顔はないから、闇にも落ちないのだろうかと考えていた。