夜風 ページ39
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深夜のコンビニは人もまばらで店員の覇気も無い。商品の品出しも無ければ補充もされていない。
だけど、そこに流れている独特な緩い雰囲気は嫌いではなくて、むしろ日常の中で無意識のうちに安堵出来る瞬間なのかもしれない。
無論、これは一緒に行ってる人がいるから言えることなんだろうけど。
『...うーん』
「決めた?」
『...悩む、どっちにしよう』
日用品と生活雑貨の棚の前で両手に2つの商品を手に取り、うんうんと頭を捻りながら真剣に見比べている亜紀。
この状態になってから、かれこれ5分。
どうでもいいような事の決断力が無いのはいつものことだ。
俺が基本ルーティーンで雑誌コーナーをひと通り眺め、飲み物やグリーンガムを籠に入れて戻って来てもなお、先ほどと変わらない状態を維持している。
『ピュオーラにするか、G.U.M にするか...!!』
「どっちでもよくね?」
『だって少なくとも2ヶ月以上は使うものでしょ?』
「たかが歯磨き粉だろ」
『うーん、ピュオーラナノブライトが王道な気がするけど G.U.M デンタルペーストも捨てがたい...!!』
「間とってシュミテクトにすれば?」
『私別に知覚過敏では無いから!』
時刻はAM 0:20
これから俺の部屋へと帰る道中、置いていた歯磨き粉が無くなっていたことに気付いてコンビニに立ち寄ったのだ。
翌日は二人とも午後出の予定。
さながら遅い時間に出歩いても特に支障は無い。
『...決めた!ピュオーラにする』
「はいはい、じゃあそれね」
『あ、洗浄液ってまだある?』
「あるよ」
『じゃあいっか、拓司の借りるね』
「あとは?なんもいらない?」
『うん、大丈夫』
「じゃあ行くかー」
気だるそうな店員の支払いを終えて、自動ドアを通って生温い夜風を浴びながら歩く家までの道のり。
わかりやすい程の満月が照らす。
寒くもなく暑くもない。こんな季節がずっと続けばいいのに。
まぁ、少しすれば例年の如く、
夏が恋しくなって。秋が恋しくなって、冬が恋しくなって。そうこうしているうちに、また春が来るんだろう。
横断歩道の前で立ち止まる。
赤信号。
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aki(プロフ) - aichさん» ありがとうございます!^ ^ そう言って頂けて本当に嬉しい!あのお話は伊沢さんにおんぶされたい願望を爆発させたものです!少しでもaichさんの心に響いたのなら、これほど嬉しいことはありません!本当にありがとうございます^ ^ (2019年3月12日 13時) (レス) id: 47898df90d (このIDを非表示/違反報告)
aich(プロフ) - とっっっても素敵でした。3連休デートのお話で、伊沢さんが夢主ちゃんをおんぶしながら考える回がとっても感動して泣けました(語彙力) (2019年3月11日 21時) (レス) id: 256f7a3088 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aki | 作成日時:2019年3月6日 9時