伊沢くんと幼馴染恋人ー２ー

◎ ページ36

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途切れ途切れの言葉を発する度に、ジワジワと顔に血液が集中していくのが分かる。


キスを要求するだけならなんて事ないと思っていたのに、そんな甘いものじゃ無かった。


(...これは大変な心理戦だ。)


痛感する、たかがキス。されどキス。


求めるキスのその表現は、なんとも複雑で羞恥心と多大なリスクを生じる。





「...深めなやつって何？」

『え、』

「どういうこと？」

『...えっと』

「もっと具体的に言ってくれなきゃ、分かんねぇな」





繋いでいた手はそのままに。

ゆっくりと私の目の前にしゃがみ込んで、覗き込むようにじっくりと見つめてくる拓司。


ドクドクと心臓が脈打つ。

同時に、手がジワリと汗ばんでいるのが分かる。





『...よ、夜にするやつ、みたいな』

「夜？」

『...うん』

「んー、いまいち伝わらないな」

『...えー？』

「夜って、一体なんのことを指してるのか抽象的なんだよなぁ」

『...うぅ、』





口角を上げて頬杖をついて、不敵な笑みを浮かべている。



間違いない



(...絶対に、面白がっている！！)




この男。



私の言いたいことなんて100%理解しているくせに！

わざと質問を引き延ばして、こっちの反応を見てもて遊んでいる...！！！



なんて奴だ...！！！



これはもうキスが上手いとか下手とかの検証以前に、伊沢拓司という人間に手のひらの上で転がされてる。


皆さん、伊沢拓司ってこういう人間なんですよ。テレビようの立ち振る舞いと礼儀正しい挨拶に騙されないでください。


私にはこんな理不尽な悪魔の尋問をぶつけて来るんですよ。





『...だから、つまり、』

「......」

『...夜っていうか、その...』

「......」

『...えっと』

「......」

『...え、えっちの時に、』

「......」

『...するやつ...みたいな...』

「ああ。ディープキスね」

『！！』




(ああ！もう......！！！)



何という奴だ...！


引き延ばすだけ引き延ばしておいてあっさりと結論を言うだなんて...！！！


こっちはもう顔から火が出そうなくらい恥ずかしいっていうのに...


こういう時は本当にドSだ...


しかも確信犯でタチが悪い...


これは悪質だ、実刑だ...

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