春風 ページ24
ーーーーーーーーーー
小気味好く晴れ渡った朝。
肌寒さはまだ少し感じるけど、冬用のアウターはもういらない。
住み慣れた1LDKのアパートから歩く最寄り駅までの道のり。
目的地は別だけど彼女と二人で歩く。
何でもない日常なんだろうけど、それすらも久しぶりに感じる。
(背中に背負うリュックが、同時にテンポ良く揺れる。)
7:00設定のスヌーズを3回見送ってから目を覚ました亜紀はまだ体内時計が不完全らしい。少しだけ虚ろな目でコシコシと右の瞼を擦っている。
『やば、シャドー取れちゃった』
「塗ってたの?」
『えー、気付いてなかったの?』
「全然」
『まぁいっか、もともと塗っても塗らなくても大差無いし』
化粧なんかしなくたっていい。
そのままで十分可愛いよ、なんてことはもちろん言える訳が無い。
何気ない褒め言葉は見上げる青空に投げ入れて消した。
駅まで徒歩10分程度の道のり。
ふとした瞬間に河川敷にも春風が吹く。
『...あったかくなったよね』
「3月も半ばだからな」
『早大のキャンパスもね、なんか芝生が青くなった気がするの』
「目黒川の方なんて、もう桜の蕾が膨らんで来てるらしい」
『そうなの?早いなー』
「福岡の方なんてもうすぐ開花だな」
『お花見するの?拓司達は』
「メンバーで?」
『そうそう』
「需要あるか?それ」
『あるよー、楽しそうじゃん』
風でサラサラとなびく髪を耳に掛けながら河川敷を見下ろす亜紀は、昔から変わらない童心の様な目で、生い茂るその緑を映している。
雑踏に紛れて疲れ果てる時、
いつだって隣にいて欲しいと思うのは、数ヶ月前に一緒に買ったナイキのエアフォースワンをテンポ良く踏み鳴らして歩く、他でもない彼女なんだ。
189人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
aki(プロフ) - aichさん» ありがとうございます!^ ^ そう言って頂けて本当に嬉しい!あのお話は伊沢さんにおんぶされたい願望を爆発させたものです!少しでもaichさんの心に響いたのなら、これほど嬉しいことはありません!本当にありがとうございます^ ^ (2019年3月12日 13時) (レス) id: 47898df90d (このIDを非表示/違反報告)
aich(プロフ) - とっっっても素敵でした。3連休デートのお話で、伊沢さんが夢主ちゃんをおんぶしながら考える回がとっても感動して泣けました(語彙力) (2019年3月11日 21時) (レス) id: 256f7a3088 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:aki | 作成日時:2019年3月6日 9時