伊沢くんと幼馴染恋人

◎ ページ13

サークルの先輩から人数合わせの為に誘われた合コン。


事情は把握している。


一度は理解して寛大な心で受け入れた、...はずだった。


社会人なんだし、合コンの一つや二つどうってことない。


それも社会勉強の一つだなんて格好つけて納得していたはずなのに。


なぜ今になってこんなにも嫌悪感を抱いてしまうんだろうか。


(....たぶん。いや、絶対、)


俺以外の男性と会う為に。

彼女が普段以上に綺麗に着飾っているからだ。


実に女々しい。こんなの、ただの嫉妬。


自分でも驚くほどの、小さな小さな独占欲が脳内を網羅している。




「じゃあさ、せめてズボンにしたら？」

『え？』

「そのスカート、お気に入りって言ってたじゃん。汚れたら困るでしょ？」

『お気に入りだから履いたんだけど、それに汚れることなんて何もないよ』

「ジーンズにしなよ、その方がそのトップスに合うって」

『私のファッションセンスに文句言ってるの？ていうか、今さら着替えるの面倒なんですけど』

「オシャレを面倒くさがっちゃダメだと思うなー、俺は」

『なにその意味不明な格言。...電車の時間遅れるから、もう行くね』

「......」




小さな抵抗も普通にたしなめられてしまった。

不安要素は一つでも減らそうと試みたものの、それは見事失敗に終わった。



(...仕方ない、作戦を変えるか。)



カバンを手に取り足早に玄関へ向かう。


少しずつ遠くなる彼女の後ろ姿を静かに横目で見ながら俺はやや大きめの声で演技をする。

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