だからそうやって笑わないでくれ【Free!】

眼中 ページ16

『…お兄ちゃん、江ちゃんには今日、会った？』

「いや、ちょっと前似鳥と」


『背も高くなっててね、ほんとにしっかりした子だよね』


〜ね、と最後にね、を付けてくるが本人は無意識らしい。

ご機嫌そうに笑いながら言ってくる。


「……弓道に進んだんだってな」

『うん、今度お兄ちゃんにも見せてあげるね』



花が咲く笑顔で見てくる。

また、だ。



俺に対して眼中にも入ってない顔をする。

無自覚、無意識。
それがこんなにタチの悪いものだったなんて知らない。


「お前、好きなヤツとか居んのか」

『それは、どういう意味で？』


「付き合いたい、とか」

『いないかな』



「…そうか」


少しほっ、と息を吐けば歩きながら近くの花に目を向ける。

よかった、なんて思う自分が憎い。



『お兄ちゃんは？』

「は、」


びっくりしてAの方を向けばなんでもなさそうな顔をして俺の方を見る。

その顔は、俺の時間を止めたぐらい静かで綺麗で。


ああ、こんな顔するようになったのか。

なんて思った。




「…いねぇな、俺も」

『つまんないの』


「お前もだろ」

『ふへへ』


「…お前はあんまり変わんねえな、見た目」

『なんかあんまり伸びなかった』


「前はお前の方が余裕でデカかったもんな」

『うん、不思議だね』


「な、」

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