69 ページ20
それは私が嫌なんですが、とは言えず。
説得の仕方が中々私には納得できない言い方で、おい！と言いそうになる。
仕事を与えてもらえなくても同じだけ給料がもらえるのならば、と少しこの状況がおいしく感じていたのに。
彼は渋々納得したアニーの頭に手を置き、優しく頭を撫でた。
｢じゃ、仲良くな｣
｢確かに、仕事を与えないのは私が損だったわ。て訳で、あんたのこれからの仕事は原料量りよ｣
｢はあ。まあやりますが｣
｢1ｇもズレてたらダメだからね。頼んだわよ？新人｣
先程の原料量りの腕を見込んでくれたのか、たくさんの試験管や生薬を渡される。
ビニールに入った生薬なんかは放り投げて渡され、扱い方が雑を通り越して薬への虐待だと思った。
自分の国でも仕入れることが出来ないような高価な生薬を見つけて、思わず驚きで落としそうになる。
こんな高価なもの、なんで放り投げられるんだ・・・・？
｢……ねえっ、｣
｢わっ…………ダチュラさん？｣
｢手伝ってあげるわ。その量、流石に今日は無理だけれど｣
シャクヤクを採取し、腹痛剤を作り終えるといつの間にか時計は16時ちょっと過ぎを示していた。
もうすぐ夕飯の時間だったので、一度本部に戻り食堂に行かなければならない。
この仕事は明日に回すことにして、彼女と一緒に食堂に向かった。
｢あなた、そういえばどこ出身なの？｣
｢……あー、えっと｣
｢…言いづらいかしら｣
｢あっ、いえ、あの…、｣
私はここの国の出身ではない。
なので適当な地名も出てこず、その場しのぎの言葉も見つからない。
彼女の質問の返答に困っていると、彼女は申し訳無さそうに眉を下げた。
｢………ごめんなさい、困らせたみたいね｣
｢いや！あの………、深い訳がありまして。…もう少し、｣
｢わかった。待つわ｣
意地の悪い上司を思い出せば、目の前の彼女は聖母のように見えた。
あの状況下で私を助けてくれる時点で優しさが滲み出てはいたが、ここまでとは、と余計に心を打たれてしまう。
どこか菊さんのような包容力を感じて、思わず頬を緩めた。
｢お〜？A、友達出来たんか｣
｢……しゃおろんさん、｣
｢ちっすちっす〜…？あれ、そいつ誰？｣
｢っ…！シャオロン様、ゾム様！私は薬品生産課、ダチュラと申します｣
｢へー。コイツんことよろしくな。見た目より筋肉質やけど｣
｢ちょっと！変なこと言わないでください！｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1371人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
叶子(プロフ) - アキさん» そうおっしゃって頂けてとても嬉しいです！ありがとうございます！！頑張ります！！！ (2021年3月2日 19時) (
レス) id: 9eb6eeed7a (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - この作品のknｼﾏさんが好きすぎて更新が本当に楽しみです！とっても面白いです、応援してしています！ (2021年3月1日 19時) (レス) id: 41a4293417 (このIDを非表示/違反報告)
叶子(プロフ) - 方舟さん» いえ私は全く何の関係も知識もないド素人でございます(^^ は！看護学生の方でしたか・・！実際学ばれている方からすれば不自然な点が多々あると思います； なるほど！それは是非お聞きしたいですね。近々お迎えにあがりますのでどうかその際はよろしくお願い致します。 (2021年2月24日 1時) (レス) id: 9eb6eeed7a (このIDを非表示/違反報告)
ReiHeta(プロフ) - 叶子さん» のんびり、気ままに更新まちまこ (2021年2月23日 21時) (レス) id: bd92c2b39c (このIDを非表示/違反報告)
方舟(プロフ) - 続編前から読ませてもらっています。わざわざ薬の成分や、効き方を調べるだなんて…もしや本職だったりします？元（ここ重要）看護学生なのですが、時代相応かはさておき、あるある話等提供はできますので、必要があればお声がけ下さい。 (2021年2月23日 19時) (レス) id: 894a36e101 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：柚
| 作成日時：2021年2月23日 16時
