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｢……！…………！………………みょうじ！！｣
｢……A！｣
聞き覚えのある声が私の名前を呼んだ。
ぐらつく意識の中、布団を顔からずらすと眩しい光が差し込んできて思わず目が眩む。ゆっくり体を起こしたものの、揺れる視界の中睡魔とまだ交戦中だった。
ふあ、と間抜けた欠伸をしてぱちぱちと視界がクリアになるまで瞬きをしていると、見知った顔がベッドの端に座っていた。
｢おはよ｣
｢………ッはぁ！？！｣
｢ちょ、デカい声出さんといてバレるねん｣
彼は、しーっ、と口元に指を当ててジェスチャーした。
その仕草が仕事中お菓子を分け与えてくれる彼と全く同じで、やはり自分の知る同期のトントンじゃないかと再認識する。
｢……やっぱトントンじゃん｣
｢うん、ほんまごめんな。ちょっと事情あんねん…｣
はぁ、とため息をつく素振りは仕事中の彼と全く同じだ。後輩がミスをした時、上司がありえない仕事を依頼してきた時とはまた違った表情だが同じ類の、疲労見える表情を浮かべていた。
｢事情って？｣
｢信じられんと思うけどーーーここ、夢の中やねん｣
｢ーーーはあ？｣
確かにこの非現実的な状況には、夢と呼んだ方が1番相応しいだろう。しかし、それにしては自我がしっかりしていて現実での記憶もある、これを夢と呼んでも良いのだろうか。
どっちとも言えない、というのが正直なところだが、それは結論とはいえない。
彼が冗談を言っているようには見えないので、それが現実なのだろう。
夢、だとすれば。
現実に戻りたい戻りたくないという意思よりも、これからどうすればいいんだろうという不安の方が大きい。状況は正直全く把握していないものの、夢から覚めるとかいう問題はそう簡単に解決しないんだろうということは彼の様子から読み取れてしまった。
｢夢…｣
｢俺も状況全く分かっとらんけど、みょうじも分かったやろ。寝て起きても向こうには戻れん｣
｢夢だとして、覚める方法がわかんないってこと？｣
｢…まぁそうなるな｣
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作者名：柚
| 作成日時：2023年12月17日 17時
