非現実的、されど現実 ページ9
｢えっ、なんで？｣
｢え？｣
｢……どういうこと？｣
要するに誰だお前、と言われたことに関してショックより先に意味がわからないという疑問が先に舞い降りた。
いや、だって、だって。
ーーーいやだってさっき手握ってきたじゃん！！
さっきとは語弊があるが、正確には私がこの世界で目覚める前の現実でこの男に意味深に手を握られた。あの意味を問いただしたくて仕方なかったのに、その前に視界が暗転して目覚めたら世界が変わったように今私はドレスを着ている。
｢誰かと勘違いしてんちゃう？ほら、僕みたいなんその辺におりますでしょいくらでも｣
｢いやおらんやろ｣
｢でもトントンって名前……まあ普通知っとるか｣
｢まぁご令嬢、トントンと何があったか知らんけど……目立ってるけど大丈夫そ？｣
茶髪の男、もといシャオちゃんがなんでもないようにそう言い放った。
同期トントンの登場で彼しか見えていなかったが、周りを見るとほとんどがこちらをちらちらと傍観していた。少なくとも鬱は先程の令嬢が青ざめていたように上の位の人間なのだろうが、トントン含め目の前の男が何者か分からない。しかし大先生__恐らく鬱の名前だろうか。親しげにそう呼ぶ辺り彼も同等位の人間なのだろうと察知する。
自分自身も、自分がどの立場の人間か分かっていないのに出しゃばり過ぎたかなと後悔する。
｢すみませんが私はこれで失礼します｣
｢えっ、ちょお待ってや！｣
｢……｣
腕を掴もうとした鬱を避けて足早にその場を立ち去る。
すれ違う人が皆こちらを物珍しく見ていたが、出口に辿り着いてすぐ様パーティー会場から抜け出した。
.
ーーーあまりにも夢が長すぎる。
どうやって会社の昼休憩からこの視点に切り替わったのかも理解できないし、正直なところあの時の記憶も曖昧だ。
パーティーから逃げるように帰宅して、ドレスだけ脱いでお風呂も入らずにベッドに入り目を瞑っている。このまま眠って起きたら、元の世界に戻っていないだろうか？
この世界はあまりにも気味が悪い。どうやっても夢であることは分かっているものの、そう考えるほどそうではないと頭が警告するように頭痛が襲う。
ーーーもし、これが夢でないとすれば、一体？
結局、結論に辿り着かないまま、そのまま眠りに落ちた。
.
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作者名：柚
| 作成日時：2023年12月17日 17時
