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手でピースの形を作って問いかけられる。
彼がそう言った瞬間に自分の傍にいた令嬢達が一歩下がって、そそくさとそれぞれ人混みに紛れて姿を消した。
その様子に唖然としていたらいつの間にか隣に来ていた彼に腰を抱かれて、会場の外へ出れる扉を指さしこちらを覗き込む。
｢外行かへん？ゆっくり話そ｣
ふわりとほんのり香る煙草がすっと鼻に入ってくる。
了承を得ていないのに腰に触れるのはセクハラか、それともこの業界のビジネスマナーか。
現実で多少なりともセクハラは受けてきたものの、そこまでガッツリとした被害は幸い被っていない。だからこそ現状の立ち回り方が分からずに、ただ苦笑いを浮かべて困惑している。
ぐっと腰を引かれ、強制的に歩き始める。
この状況をどう打開しようか悩みながら歩いていたら、前方から歩み寄ってきた2人の男性が行く先を阻んだ。
｢おい大先生。ナンパすんなや｣
｢シャオちゃんや。いや〜まぁそれも兼ねてやけど、ちゃうんよ今回は｣
｢なにがちゃうねん、その子明らか乗り気やないやろ離したれや｣
｢えっ、そうなん？｣
パッと腰から手を離し、ごめんなと両手を合わされる。
白々しい反応だが困っていたので助かった。
目の前の男性、シャオちゃんと呼ばれた男は盛大にため息をついて鬱を睨んだ。その場から一刻も早く逃げ出したかったが、流石に挨拶しておこうと改めて向き直るとその男の隣にいた人物に目を見開いた。
｢トントン……っ！？！！？｣
黒髪にメガネ、すらっと高い身長。
明らかにどう見ても同期のトントンが平然と隣に立っていた。
｢え、トントン知り合い？｣
ぱちぱちと瞬きをする鬱がトントンに問いかける。
私は知り合いとの遭遇にどくどくどくと心臓を逸らせながら、こちらを見下ろすトントンを見つめた。
妙にリアルな感覚に、夢とは思えない自我の存在。
状況的な話どう考えても夢物語、つまり夢の世界なのだけれど感覚があまりにも現実味を帯びていてとても不安だった。
まさかな、なんて思ってもしかしたら、なんて思ってを繰り返して。
願ってもない救世主の登場に驚きと喜びを募らせていたら、やっとのことで彼が口を開いた。
｢いや知らんけど｣
夢なら覚めてくれ、なんて。
彼は見たこともないような冷たい瞳で、そう言い放った。
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作者名：柚
| 作成日時：2023年12月17日 17時
