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｢お嬢様？なにをぼーっとしているのです｣
ぽかん、と呆気にとられて口を開けている私に1歩前を歩くメイドが首を傾げた。
生涯着ることもなかっただろううん百万ほど値が張りそうなドレスに袖を通し、ドレスの裾を蹴りながら導かれるまま歩いていた。見るからに高価そうな生地には、宝石がまばらに散りばめられている。
｢なんでもないよ、大丈夫｣
｢そうですか、では参りましょう｣
ーーードレス、死ぬほど重い。
にっこりと微笑むメイドに引きつった笑みを返して、声色だけは平然を装った。
目覚めて2時間ほど時間が経ったけれど、全く状況を把握できない。一体なんのお披露目のパーティーかもわからずにメイドの後をついていってるだけのただの一般女性(表向きは恐らく良いところのお嬢様)なのだが、大丈夫なのだろうか、不安しかない。
たらりと冷や汗が頬を伝う。ドレスを普段着で着ることがないから歩き方もぎこちない上に、靴が不慣れで余所見すればすぐにでも転けてしまいそうなほど不安定だった。
パーティー会場の扉に手をかける前に謎の赤外線を浴びる。本人確認の為だと受付に言われたが、貴族のセキュリティは一般人には理解し難い。
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｢ーーーまあ！A嬢じゃありませんこと！｣
会場に足を踏み入れ、一先ず壁の方に移動しようとそろそろ動いていたら遠くの方で名前を呼ばれた。
驚いて声の聞こえた方へ目を向けると、自分とはまた違う系統のドレスを着た女性が数人こちらへ歩み寄ってくる。
ーーーえ、誰誰誰、やばい。
｢お久しぶりですわ、長い間パーティーにご出席されてませんでしたけど…何かありまして？？｣
｢あぁ…ええっと、｣
｢にしても運がよろしいですわね、本日はあのグルッペン様がお越しですのよ！｣
聞き馴染みのない名前にハテナを浮かべながら鈍い反応をする。
うっとりとした表情で頬に手を添える1人の令嬢が、目を瞑って語り始めた。
｢頭脳明晰、容姿端麗……それでいて才色兼備、非の打ち所がありませんわ。はああ、本当に美しい…｣
｢グルッペン様もそうだけれど、外交官のオスマン様もとっても素敵よ｣
｢あらそれを言うなら私はシャオロン様だわ。笑顔が眩しいもの｣
｢私はコネシマ様よ！｣
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作者名：柚
| 作成日時：2023年12月17日 17時
