令嬢、夢から醒めたい【d!】 (ページ12)

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確かに小声とは言い難いもののそこそこの声量で会話していたつもりだったが、外にいる使用人に気付かれてしまったらしい。
その声に返答せずにいたら、ノックを3回鳴らしてガチャリとドアノブをひねる音が聞こえた。

｢まずいな。じゃあ俺もう行くわ｣
｢え、ちょっとまってトントン…！｣

姿を隠すとしても出口は一つしかない。逃げようとする辺り、やはり不法侵入には間違いないのだろう。ならば尚更使用人が去るのを待ってから行動すべきだろうと考えたが、トントンの背中を追うより先に扉の向こうを気にかけた。

ーーと、使用人の様子を危惧して視線を移したのはその一瞬だけだったのに、その一瞬のうちにトントンは姿を消してしまった。

｢お嬢様、お嬢様｣

｢っごめんなさい、騒いじゃってた？｣
｢いえ、そんなことは。しかし話し声が聞こえた気がするのですが…｣

彼女は頬に手を当て、きょろきょろと周りを見渡した。

しかし確かに彼はどこへ姿を消したのだろうか。
不法侵入には違いないものの、彼は私の知り合いでこの世界でも唯一の理解者だ。ここで不法侵入だとか本当のことを言って彼を犯罪者だと証明するのは気が引ける。かと言って彼を連れ込んだと知れ渡っても困るしーーー

｢ーーーあら？窓が開いてますわ｣

彼女が気付いたように指さして、カーテンがゆらりと揺れた。確かに頬に冷たい風が触れて、ふるりと体が震える。
彼女は窓の側まで近寄り、ずれたカーテンを整えて窓の扉をしめる。

｢日光浴は大変よろしいですが、終わった後はちゃんと戸締りしてくださいませ｣

彼女はこちらを振り返ってくすりと笑った。

しかし、私は一度も窓を開けた覚えなどない。夢遊病でもなければ。

｢ーーーねえ、ここって何階？｣
｢お嬢様のお部屋ですか？1階がメインフロア、2階が旦那様のエリアで、ここ3階がお嬢様のお部屋ですわ｣
｢3階…………｣

ーーーーーいやあ、そんなまさかね。