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同期の結婚の話で盛り上がったものの、この男はその辺どうなのだろうか。興味が無かったために気にしたこともなかったのだが、もしかしたら既婚なのかもしれない。よくよく考えてみればこの男、優しい上に博識でもうすぐ役職付きに推薦されるとかなんとか噂されていた気がする。
じっと無言で彼を見やったら、その視線に気付いた彼がきょとんと首を傾げてこちらを見つめ返した。
｢どうかしたん？｣
｢べつに〜。ねぇ、トントンはいい人いないの？｣
｢……べつにおらんけど｣
｢え、絶対彼女いると思った｣
｢ほんまに言うてるん？｣
トントンはそう言いながら怪訝な顔でこちらを見た。
仕事人間ですらっと高い身長、おまけに女子に優しい。仕事に追われている為に目の下のクマはすごいけれど、後輩女子からは憧れの眼差しを向けられている。仕事ばかりで周りをそこまで注視出来ていないのか、恐らくその視線には気付いていない。今も尚、同期の私に向けられている同じ部署の女子の視線が痛い。
まあたしかに男女2人で食堂にいたら怪しまれるのも一理、今後は会議とは関係なく行動を慎むべきだなとお茶を飲みながら反省した。
じいっと納得のいかない顔をしたトントンが、はあっと大きくため息をついた。
｢そうゆうみょうじさんはどうやねん｣
｢いい人？まぁいないかな｣
｢え、そうなん？｣
｢うん｣
｢へ、へえ……そうなんや｣
｢誰かいい人いる？｣
歯切れの悪い彼にそう問うと、ゆるくあがっていたはずの口角が下がった。急に表情の無くなった彼に違和感を覚えて、やらかしたと焦って必死に話題を変える。一向に表情の切り替わらない彼に酷く焦っていたら、にぃっと口角をあげてキラリと赤い瞳を輝かせた。
｢ピポッ｣
｢……？？？？は？？？｣
｢いや宇宙人のマネ｣
｢……おもんな｣
｢笑えよ｣
調子の戻ったトントンにホッとしてお茶を一口飲んだ。タイミング的にネタは最悪だが、非現実的すぎて今更縁起が悪いとも感じなかった。
ーーーすると、彼の手が伸びてきて。
｢ーーーーッえ、…！？｣
｢ん？｣
｢な、え、なにっ…？｣
お茶を持っていた手の指に触れて、そのままコップと手を離される。するりと指を絡められて、指の付け根まで包み込まれてゆるく手を握られた。
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作者名：柚
| 作成日時：2023年12月17日 17時
