こわくないよ。３

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小山視点



「手越、」



何度呼んでも、
虚ろな瞳に俺がうつることはない



昨日はシゲとの電話で
全部聞いた



誰も悪くない、
ただ、
ちょっと上手くいかなかっただけ



でも１度絡まった糸は
簡単には解けなくって、

焦れば焦るほど
ぐちゃぐちゃになる、



酷い隈、
眠れなかったんだね、


ひとりにしてごめんね、




「シゲがね、すっごい落ち込んでた。
手越を傷つけた、って。」



シゲ、って名前に少しだけ
反応した



でもこの後の言葉が見つからない…



だから許してあげて、
なんて可笑しいし


手越も辛かったね、
なんてお前に何が分かる？
って感じだろうし





こうやって困ったときに
いつも俺の言いたいことを
分かってくれるのは手越なのに、


会話を広げてくれるのは
手越なのに、





「手越、…っ
俺に、何が出来る、
俺は、どうしたらいいの、」




細い体に縋って
情けなく涙を流す



俺、駄目だね


安心させて
あげなきゃいけないのに、




大丈夫だよって
言ってあげなきゃいけないのに、









ふわっと頭を撫でられて
顔を上げる




ほら、やっぱり




俺はいつも手越に
助けられてばっかりだ





「手越、手越…」




手をぎゅっと握ってくれて




でもその手は
骨ばっていて
細くて血管が浮き出ていて



とても頼れる手とはいえないけど
手越がこうしてくれると
大丈夫なんじゃないか、って
思えてくるんだ





手越は何も言わずに
ただただ俺の手を握り続けた



目も合わせてくれない








手越、声を聞かせてよ


優しい声で
いつもみたいに


けぇちゃんって、よんでよ









結局手越は
唇を閉じたまま、
本当に１度も声を出さなかった

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