醜い少年の話【ヒロアカ】 (ページ6)

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Story.6 ページ6

それから、何日過ぎただろう。

時間の感覚が段々と無くなってきて、ただ指定されたことを、義務付けられたことを時間通りに行う……そんな生活だけを送ってきた。

逃げることも許されず、あまりに退屈で、窮屈で、妙に苛立ちが湧いてきて、自分で自分を傷つけて、夜な夜なその痛みに苦しむ。

周りの物をいくら壊そうとも、翌日には元通りになっている。

何の変化も無い。
たった一つ。一つだけ変化していたのはただ無感情なニュースが淡々と、街の様子を告げる、テレビだけだった。

窓も無く、密室になっている病室は実に詰まらない。何もすることはなく、本ですら無いのだ。

テレビのチャンネルは全てニュースだけが報道されていて、ドラマやアニメ、バラエティ番組の一つも見れない。

今日もまた、時間通りに検査へと向かう。
今日もまた、無効化野郎が傍に見張りとして付いている。

「……アンタ、名前は」

診察室までの短い短い廊下を歩いている中、何となく、何となく今日は話しかけてみた。

何故か理由は分からない。

でも、名前すら分からないその無効化野郎は、俺の個性を消すことが出来るせいか、何一つ俺を怖がらなかったのだ。

初対面の人間は大体、俺の個性を見て怯える。
そして大体最後に、「この化け物」と捨て台詞を吐いて逃げるように去っていくのがオチだ。

でも、こいつだけは違った。
俺を怖がるどころか、どこか馬鹿にしているような雰囲気すら感じる。

腹が立つが、そんな人間は初めてだった。
だからだろうか。何となく、気まぐれに話しかけてみたくなったのだ。

「イレイザーヘッド」

「違ぇよ、本名。…どうせバラす相手も隙も時間も無いんだから良いだろ」

イレイザーヘッドは、ヒーロー名か。
あまりにもそのままで、思わず笑いを堪えた。

イレイザーヘッドは、その後しばらく間を置いて、「……相澤消太」と告げる。

相澤。相澤か。
へー、と俺は呟いて診察室の前で止まる。

「聞いといてその反応か」

「どう反応すればいいのか、分かんねぇし。
……あまりにも普通に話してるから」

………。

俺の発言で、場の空気が気まずくなった。
相澤も突っ込みにくそうな、微妙な表情をしている。

…人と話すって、難しい。
何となくこの空気が嫌になって、いつもは開けたくない診察室の扉を自分で開けた。

「話し相手ぐらいなら、なってやる」

扉を閉める瞬間、そんな言葉が耳に入ってきた。

……思わず涙が出そうになったのは、内緒である。