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「___力が、使えない」
『…弱点なんでしょ。“海”』
“海の加護”とはつまり、対能力者用の力だった。
“海楼石”ってやつと似てる。私に触れられた能力者は、力が使えない。多分、そういうことだ。
手を離すと、今まで握っていた男の手が突然、凍りついた。
「……説明して、くれるよね」
『あ、はいそれは、モチロンです!』
明らかに警戒された_というより殺気立ってる_目を向けられて、背筋が伸びる。
でもよく見ると、男はどこか疲れてるように見えた。当たり前か。弱点だもんな。
悪気はなかったとはいえ、実験をしたようなものだ。罪悪感がじわりと湧いた。
『…この世界に来るとき、“海の加護”を受けたんです。』
「海」と会った流れは、割愛。
『最初は、なんのこったって感じだったんですけど。悪魔の実の話を聞いて、ピンと来て…その…
試すような真似して、ごめんなさい。』
「……そ」
『うわっ』
突然ぐしゃりと頭を撫でられた。
「いいよ。許す。」
_____________
ポカンとした顔でぐしゃぐしゃの頭を抑える姿に、クザンは思わず吹き出した。
『なんで笑ってんですか…』
「髪が、ボサボサだなぁと」
『アンタがやったんだよ』
不思議な子だと思った。
まず出会いからして衝撃的だったけど。海に浮いていたのだ。死んでるかと思った。
いざ対面すれば、名前はわからない。出身は聞いたことも無い場所。極めつけに、自分は別世界からやってきたのだと言う。
正直、頭大丈夫かなと思った。長い間海に浸かって脳みそふやけちまったかと。
その張本人は今、もう終わるかと思った…。と言ってほっと息をついていた。
「終わるって?」
『だって、敵なら殺すんでしょう?』
「敵なの?」
『敵じゃない!』
___弱点なんでしょ。“海”
さっきの雰囲気は何処へやら。こうしていると、ただの歳相応の女の子だった。本当に先程の子と同一人物か、疑うほどに。
久しぶりに、肝が冷えた。
この子には嘘がない。直感だけど。
別世界から来たってのも、信じ難いけど多分、本当のことなんだろう。
「お嬢ちゃん、この先どうするの?」
尋ねると、ぐっと眉間にシワがよった。分かりやすい。
小さな子供のように見えたり、歳の割に大人に見えたり、冷たく殺気立って見せたり、
不思議な子だ。それと、面白い子だ。
「行くとこがないなら、来る?」
これはただの、興味と好奇心。
続く お気に入り登録で更新チェックしよう!
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夏終朝凪(プロフ) - とても面白そうな始まりかたで好きです!これは続きが気になりますね……(/ω・\)チラッ作者さんのペースで気が向いたときなどに更新してくださると嬉しいです(о´∀`о)楽しみにしてます! (2020年12月25日 21時) (レス) id: 8142368f1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:野次 | 作成日時:2019年10月14日 17時