掃除屋はじめました。２【A3】 (ページ30)

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57話ページ30

-天馬side-

放課後。
今日は太一も十座さんも用事で先に帰った。井川も大事な打ち合わせがあるとかで。
一人で歩いて帰っている。のだが、

天馬｢何処だここ…｣

何時もの通学路を歩いていたつもりが、見慣れない住宅街にいる。

ここで一つ言っておく。俺は方向音痴では無い。断じて。
しかし、今のこの状況は、迷子。
別にいつも迷っている訳では無い。今日はたまたま、である。

(幸｢また迷子かよ｣)
脳内幸うるさい。

天馬｢…どうするか｣

さてどうする。
俺は今迷子。これは認める。
そしてこの状況を突破する方法は一つ。

カンパニーの奴らに連絡を取る。

しかし、そうすると自然と奴らに俺が迷子だったことが知れ渡るということで…

(幸｢ほんとポンコツ｣)
脳内幸うるさいぞ！！

…それは出来れば避けたい。

何か他の方法は……

『あれ、皇天馬？』

天馬｢お前、掃除屋…！！｣

現れたのは、最近入った掃除屋。カンパニーのやつに見つかってしまった。

『こんなとこでなにしてんの、迷子？』

しかも一瞬で言い当てた！？

天馬｢ち、違う！ただの、散歩だ！｣

コイツがカンパニーのメンバーである以上、俺が今迷子だと言うことは何としても隠し通さなければならない。

天馬｢そ、そういうお前こそ、迷子なんじゃないのか？｣
『いやいや、あたしは家がこの辺だからさ』

『っても、もう売っぱらうから家じゃなくなるけど。
最後になんか忘れたもんとかないかなーと思って、見に行ってきたのよ』

天馬｢…じゃあ、もう帰るんだな？｣
『…まぁね？』

これはチャンスじゃないか？
帰る場所は同じなんだ。このまま一緒に行けば、迷子だということはバレずに無事に帰れる。

天馬｢よし、じゃあ一緒に
『あ、用事を思い出した』
何だと！？｣

『あたしちょっとおやつ食べたいんだった』
天馬｢それは用事とは言わないだろ！？｣
『近くに美味しいケーキ屋さんがあるんだ』
天馬｢聞いてるか俺の話！｣

掃除屋はケーキ屋についてつらつらと語り出す。俺のことはガン無視で。
これはやはり誰かに連絡するべきか。…いや、少し自力で頑張って歩くか。

天馬｢…じゃあ、俺はそろそろ帰る…｣
『え、なんで』
天馬｢は？｣
『ひ？』

『ケーキ屋、一緒に来ないの？』

思ってもいなかった提案にポカンとすると、掃除屋があれ！？と慌てた様子で｢おやつ食べないの？｣と加えた。

天馬｢……たべる。｣

ゆっくり頷くと、掃除屋は満足そうに笑った。