掃除屋はじめました。２【A3】 (ページ23)

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50話ページ23

-丞side-

朝の6時。

今日も日課のランニングのために早く起きる。
日曜日の早朝ということもあって団員たちはまだ起きてこない。

普段の賑やかさが嘘のように静まり返った寮内。

あまり音を立てないように慎重に動いた。

(＿よし、行くか)

靴紐をキツく締めて気合を入れる。

外へ出ると、ふと玄関先にしゃがみ込む人影が目に入った。

こんな朝早くに一体誰が…

丞｢…お前、こんな所で何してるんだ｣

『あ、おはざす』

人影の正体は一昨日入った掃除屋だった。

丞｢…ここで何してる｣

再び同じ質問を投げかける。

…まぁ、ジャージにスニーカー姿という時点で
嫌な予感しかしないが。

『あたしも一緒に走っていいですか！！』

丞｢………｣

『え、そんな嫌な顔します？』

こんな奴と一緒に走ってたまるか、と思った。
第一、俺はコイツのことが気に入らない。パッと出の素性もしれないこの女の事が。

俺のコイツへの印象は“男好き”。まだ大して関わったことは無いけど。

こうして一緒に走ろうとしてるのだって、GOD座の頃の俺を気に入ってるからなんじゃないのか。

丞｢断る｣

『たーちゃん酷い！！』

ふと、聞き覚えのあるニックネームに
幼馴染の顔が浮かんだ。

誰に俺が朝走っていることを教えてもらったのかと思ったが…

丞｢…教えたの紬か｣

『大正解』

『｢丞は、いっつも朝早くに起きてランニングしてるんだ
確か、6時…くらいだったかなぁ｣

って紬くんが』

(…結構似てるな)

いや感心してる場合じゃないだろう。

＿＿でも、

紬は、俺の事について話す程にコイツと打ち解けたのか…

アイツは人を見る目は悪くない。
そんなアイツが、この掃除屋に気を許した。

丞｢…結構走るから、お前には無理だと思うぞ｣

『大丈夫ですよー
体力もある方だし』

そう言われると断る理由も無い。

それに、つむが許したのなら
きっとコイツは俺が思ってるような女とは違うんだろう。

少々面倒臭い気もしたが
渋々、一緒に走ることにした。

丞｢…ﾊｧ
勝手に着いてこい｣

掃除屋は『おっしゃ！』と言って念入りに体をほぐしだした。

(何だ、子供らしい表情もできるのか)

準備運動をする掃除屋の目は、キラキラと輝いている。昨日からずっと死んだ目をしてると思ってたが。

＿＿そういえば、旗揚げ公演の話をしてる時も
表情は生き生きとしてたかもしれない。

丞｢遅かったら置いていくからな｣

『あいあいさー！！』