インビジブル・ラブ 9 side T

やましい ページ10

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「それ、クズだな。」




指の筋トレとか意味わかんないことをしながら、汗だくになって照が言う。
飲んでたブラックのコーヒーを無気力に落としそうになって、すんでのところで堪えた。




「…え、マジ？」

「うん。そいつに言っといて。お前、男としてサイテーだよ。って。」

「…おぉ、」




翔太以外の意見も聞いてみるか、って。
Aちゃんの誕生日が近いから、プレゼントを何にしようか照に相談してたら帰ってきた言葉がこれ。
ただし、彼女いるってバレたくないから、
「俺の友達がさー。」
って、テイにして。




「大体なんだよその扱い。本命の代わりみたいな。」

「……でも、そいつはそいつなりに大切に、」

「出来てねえじゃん。だって本命のやつとの連絡先、まだ残してんだろ？」




何も言えない。
ブロック、しようとは思ってんだよ。
だけどどうしても指が動かなくて。
小雪さんとのトーク履歴を眺めて心を痛める夜も減った。
街中で彼女と同じ香水が香っても、泣きたくなる事も無くなった。
それは紛れもなくAちゃんのおかげ。
分かってるんだけど。




「…え、どうしたらいいの？…ソイツは。」

「んー、俺が思うに、やっぱ本命の子を切るか、もう彼女とお別れする、とか？」




それは無理。
Aちゃんを手放すなんて、精神安定剤を取り上げられるようなもん。

誕生日プレゼントの相談をしていたのにいつの間にか詰られた結果に終わってしまって、
しょぼんと肩を落としたくなる。
けど、嘘がバレたらヤバいから
「だよねー。伝えとくわ。」
って知らんぷり。




「おー。」

「ありがとな。」




次、雑誌の撮影が入ってるらしい。
だから極限まで鍛えてんの、って言ってるけど、
果たしてその指先トレーニングは効果あるのかな。

パタン。
閉じた扉の向こう、
「やましいことがあるやつは大体“友達”ってワードで誤魔化すんだよ。」
って。
そんな言葉が呟かれていた事を、俺はまだ知らない。


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