インビジブル・ラブ 9 side T

“それなりに” ページ8

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何もかもちっさい。
俺とは、全然違う。
俺もSnowManの方では身長とか体格とか、小さいけどさ。
もう、女の子って比べ物にならないほど華奢なんだよ。
特にAちゃんは。

ハーッ、て、手に息を吹きかけてる。
待たせて申し訳ないなあ、って気持ちと、
うわ何その仕草、かんわいい。
って気持ちが混同して顔のニヤけが抑えきれない。




「だーれだ？」




近寄って彼女の目元を覆うと、
思いのほか冷たい目元の体温に少しだけ驚いた。
……どれくらい待ってたんだろう。




「……深澤さん。」




あ、なんか知ってる。
この言い方、ちょっとバカにしてる時だ。
どうせ古典的だとかベタだとか思ってんでしょ。
文句を言ってやろうにも、唇からやっと出たのは
「せーかい。」
って。
100人が聞いたら、100人が惚れてるだろ！
って関西人顔負けのツッコミをするようなデロデロ声。




「…バレたいの？」



「違うけどさあ、恋人らしいことしてみたいじゃん？」




じっとり。

睨めつけた視線をこちらへ向けられる。
…今までの女の子達は、こんなこと聞いてこなかったのに。
バレそうであればあるほど嬉しがって、愛を感じてたのに。
呆れたような含み笑いを零すAちゃんに、新鮮さを感じる。




「まさかそれだけのためにあそこに私を立たせてたの？笑」



「だぁってさぁ、彼女が自分を待ってる、ってシチュエーション、やっぱり味わってみたいじゃん？」



「彼女いなかったの？」




あー、……。
ここで馬鹿正直に「うんいたよ」って答える義理はないよね。
まあそれに、メリット無いし。
算段を頭の中で立てて、驚く程冷酷な自分。




「そりゃあね？芸能界はキビシーんだよ。」




YesともNoとも言えない。
それを察した彼女は、少しだけ苦い顔をしながらも追求しない。
分かってる子で良かった。
Aちゃんが相手で、良かった。




「そういう名前ちゃんはどうなの？」



「え？私？」



「うん、恋愛とか。」





恋愛かあ。
小さく呟いた彼女は、どこかへ思いを馳せているようで。
別にAちゃんは、俺と違って嘘をつく必要はないから素直に答えてくれるはず。
桜色の唇が、少しの間を置いて開いた。




「それなりに…？まあでも、こんな職業だからあんまり恋愛とかは興味湧かなかったかなあ。」




それなりに、か。
何を期待してたのやら。
ちょっとだけ落胆してる自分に驚きながら、それっぽいワードを返して言葉の応酬。

…なんだろ、なんでこんなにいけ好かないんだろ。
ちょっとだけ、心の中にモヤがかかった感覚。




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