インビジブル・ラブ 9 side T

もう、嫌 ページ40

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『辰哉くん、おかえり。』

『ごめん。スマホの充電忘れてて、』

『ううん大丈夫。ご飯温め直そうね。』

『…怒んないの？』

『何で？』

『日付回って帰ってきて、しかも早く帰れるって言ったのに。』

『大丈夫だよ。笑』

『大丈夫なんかじゃないでしょ？だって今日は、…』

『辰哉くん。』




肩より少し下くらいの茶髪が揺れる。
染めてるはずなのに柔らかくて、元の色がそれなの？って聞いた俺に、
『なわけないでしょ。ダメージカットしてるんだよ。』
って呆れたように笑ったAの、綺麗な髪の毛。
それが緩く巻かれてて、唇も少しだけ色が強い。
いつもよりも可愛い格好をしてるのは、俺が
『誕生日のお祝いしよう、今日は。』
って、Aに言ったから。



『怒んないの？』

『うん。何で怒ることがあるの？辰哉くんは頑張ってきたのに』

『俺じゃなくて、』

『辰哉くん。大丈夫だよ、私辰哉くんがちゃんと大事にしてくれてるの、分かってるから。だから怒らないんだよ。』



……ありがと。
短くそう言った俺は、彼女に何をしてあげられただろう。
そんなAの言葉にホッコリして、甘えてた。
けど、＿＿＿＿＿＿＿＿







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「……遅い、辰哉くん。」

「…ごめん、」

「何でLINE見ないの。」

「返信、したよ？見てくれた？」

「それが遅いの。」




目の下、少しだけ隈が出来たかな。
ゆっくりと人差し指でなぞれば、低い体温を持つ手のひらでパシリと跳ね落とされた。
…大事にしてくれてるのが知ってるから、怒らないって。
あの日のAは、そう言ってた。

じゃあ、今は？

仕事で1時間スマホを見ずに、連絡が出来ずに。
それで冷たく怒って、
でもそんな自分が心底嫌いだっていうような苦しそうな顔をする。




「…もう、嫌。」



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ごめんの3文字→←康二なんかよりも

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