インビジブル・ラブ 9 side T

多分、もうダメ ページ32

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朝日の眩しさで目が覚める。
ふと瞳を開けると、ぼやけた視界、小さなシルエットが朝日を浴びながら空虚な瞳でどこかを見つめていて。
その瞬間、一気に覚醒する。
…何をやったか、あんまり思い出せない。
思い出せないけど、Aのこの表情だけで、
何か取り返しのつかない事をしてしまったのだと悟った。




「…辰哉くん、次のお休みどこ行く？」



「…うん、」




何を考えてるの。
それじゃまるで、出会ったばっかの俺らじゃん。
信頼を不審に変えたのは他でもない俺自身なのに、
その瞳が、ガラス玉みたいな綺麗な目がこっちを向かないことに酷く焦燥を感じた。





「A、」




呼ぶと、やっと瞳がこちらを見る。
……でも、違う。
そんな顔が見たかったんじゃなくて。
1日経てば、何かが変わると思ってた。
無かったことになるかもしれない、って
心のどこかで期待してたのかもしれない。






「…スケジュール、見せてよ。」



「……え？」





手のひらを差し出される。
冷たい外気に晒されて、彼女の肌は氷のように冷たい。




「……スケジュール、お互い共有しておいた方がいいでしょ？」



「……それは、」



「…嫌？」




……そんなの。
信頼を取り戻せるならいくらだって見せるよ。
デートだってどこにでも連れていくし、
買いたいものはなんでも買ってあげる。

でも、そういうことじゃないよね。
多分、何をしてもポッカリ空いたAの心の傷は埋まらない。
起き上がって、カレンダーをAに送る。

スッと細まった目が本当に冷たくて。




「…多分、もうダメになった。」




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