インビジブル・ラブ 9 side T

有り得ない ページ16

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プラネタリウムから帰って2時間後くらい。
次はどこ行く？
寒いけどピクニックとか？
そんな予定を立ててたら、不意にスマホの受信音が響いた。

【辰哉、元気？】

ドクン。
終わったと思っていた小雪さんとの関係。
何、何で今更？
その前のメッセージは、俺が既読したまま返さなかった
【レンアイごっこ】
の7文字。




「…ホントなんなの？今更。」




更衣室。
スマホを確認した手が震えるのは、きっと寒さのせい。
まだ冬には入ってないけど、きっと。


【話したい事があるの。1週間後のこの時間、いつものバーで。】


いつもの、なんて。
そんなの、いつの話してんの？
ホテルに行く前に何度か飲んだことのあるバー。
勿論何回かしか言ったことがなくて、
それに体を合わせるのが目的だったから会話を楽しむ、何てものじゃなくて。
別にいい思い出がある訳でもない。




「…いやいや、有り得ないでしょ。」




すぐに「行かない」って返事を送れない自分に、そんな言葉をつい零した。
まさか俺、迷ってる？
いや、ありえないでしょ。
だって俺には今、…。

別の受信音で目が醒める。
スライドして元に戻れば、トーク一覧の画面。
【楽しみだね。お仕事頑張れる。】
絵文字も顔文字もない簡素な文章だけど、
これを打ったAの緩んだ顔が浮かんできて、すぐに小雪さんのトーク画面を開いてブロックしようとする。

【待ってるわ。貴方が来るまで。】

……ああくそ。
何でそんなこと言うの？
もう遅いんだよ。
恋愛ってタイミングって言うじゃん。

…遅い、のに、

ブロックしかけた指は元に戻り、そのまま既読無視。
【俺も楽しみ。】
って、何も考えずにAに返した後にカレンダーアプリを開いて1週間後のスケジュールを確認する。




「…有り得ない。」




２回目の呟き。
泣きたいのはきっとAなハズなのに、
落とされた声は硬かった。


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