手を繋いで寝よう ページ2
・
いい時間になってきた。
Aちゃん明日夜からっぽいし、もう寝なきゃかな。
そう思ってると、同じだったのか強引に彼女がベッドまで手を引っ張って無理やり布団を被せた。
優しい香りがふわりと匂う。
「ほら。おやすみなさい、深澤さん。」
「…ねえ、俺の事赤ちゃんだと思ってる?」
…小雪さんに、LINE返さなきゃかな。
そう思うのに何故か指が動かない。
俺、最低。
これ見る人が見たら浮気と一緒だから。
もう何か、世の中の女性タレントからぶっ叩きに合いそうだな。
「…寝れないの?」
「…うん。俺、人の温もりが無いと寝れないの。」
枕元で俺の頭を撫でるAちゃん。
いやこれ、多分俺の事赤ちゃんだと思ってるよね?
巧妙な手を使いながら彼女をベッドへ引きずり込めば、
俺がせっかくお話してるのに眠たそう。
MCやってんだから、もっと話に引き込まれてくれても良くない?
ほっぺをむにゅ、って掴めば柔らかくて、愛おしくなった。
寝ないでー、って駄々こねるけど、眠りの奥深くまで沈んでいく彼女は誰にも止められない。
誰だよ、Aちゃんを寝させてるの。
このふかふかのベッド?
…起きてよー。
夜は苦手かもしれない。
分け合う体温は、朝方になったら消えると分かっているから。
分かっていながら抱き合って、それでも心は繋がらないからどこか寂しくて。
Aちゃんといるのに小雪さんのことを考えてしまうのは、罪だと思う。
あー、俺本当に最低。
そんな事を思ってふと彼女の方を見ると、パチリとまん丸に開いた瞳が捉えた。
ビク、ってする。
だってさ、さっきまで眠たそうにしてたじゃん。
「…深澤さん。…手、繋ご。」
「手?」
「うん。暖かいよ。」
暖かい、けどさ。
布団の下で繋がれた手のひらは一切色気がなくて、でもそれが安心する。
「あ、…やばいねコレ。寝ちゃいそ。」
「ふふ、ほんと?」
ダメだろ、俺。
ちゃんと男見せなきゃ。
今日、Aちゃんに手を出そうと思っていたのに、
そんな気持ちは薄れて消えていった。
代わりに残るのは、暖かな安心感と愛おしい、って気持ち。
「おやすみ、深澤さん。」
守られてる、って。
そんな事を感じながら心地よい睡魔に包まれるのは、何年ぶりなんだろう。
久しい感覚、悪くないかも。
そう思いながら最後の力を振り絞ってAちゃんを抱き締めれば、胸の中でクスリと笑った。
さっきみたいな諦めた笑い声じゃなくて、心底安心した。
・
2213人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ayaka(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます。前作からnecoさんの作品が大好きで、日々の活力になってます!数時間おきに更新されてるか確認してしまうくらい生活の1部になってます🥹大変かとは思いますが、最後まで楽しみにしてます!! (2月9日 23時) (レス) id: d413d8c2c2 (このIDを非表示/違反報告)
ガリリョ(プロフ) - 辰哉君とは幸せになれないんだね😭😭😭 (2月9日 12時) (レス) id: c4caf972cd (このIDを非表示/違反報告)
neco(プロフ) - まーさん» 2度目のコメント、嬉しい限りでございます( ; ; )🩵 お互い大事にしているのに、きっと愛し方が違ったからこその相互が生まれてしまって、両方引くに引けないところまで来ていて…。小雪さんが好きで、でも主ちゃんも大事、なんていう絶妙なバランスです…。 (2月8日 11時) (レス) @page39 id: fcbd2b4e2b (このIDを非表示/違反報告)
まー(プロフ) - 2度目のコメントすみません😭涙が出てきました...深さんの主ちゃんへの気持ちめちゃくちゃ伝わります...😭お互い大事に思っているのに、何故こんなことにってめちゃくちゃ悲しいです😭ほんと、報われて欲しい😭😭 (2月7日 17時) (レス) @page37 id: 936cda87a6 (このIDを非表示/違反報告)
neco(プロフ) - korokoroさん» korokoro様、いつもありがとうございます、お久しぶりです!( ; ; )korokoroさんの知りたかった所がどこなのかを知りたくてウズウズしちゃいます(笑)個人的に、康二→主ちゃんの矢印を『最後』には深澤さんが知っていた、というのがミソです(言っちゃう) (2月6日 21時) (レス) id: fcbd2b4e2b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:neco | 作成日時:2024年1月25日 22時